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「外部との連携で新しい学びを創造」  横浜市立荏子田小学校 浦部先生 青木校長先生   ~1人1台端末時代のICT活用インタビューVol.01~

 
外部企業などと連携しながら卒業制作など様々な活動を実施した荏子田小学校。そのきっかけや経過、子ども達や保護者の反応についてお話を伺いました。

 

 

外部の力を借りながら活動することで、
より自由な発想で、表現の場を提供したい

 

―外部と連携しながら様々な学習活動や卒業制作を行った経緯やその当時の思いなどをお聞かせください。

 

浦部先生:

まず学年の最初に、コロナ禍の影響により色々な制限があり、子ども達が我慢をする場面が多かったのですが、そんな中でも「自分の思いを自由に表現できる活動を年間通してしていきたいね」と担任間で話していました。そのためには学校だけの力ではなく、外部の力を借りながら活動することでより自由な発想が出てきて、表現の場も確保できるのではないかと考えました。

 

早稲大学交響楽団とコラボしてオンライン演奏会を実現

 

浦部先生:

外部と連携して活動したプロジェクトの一つが早稲大学交響楽団(通称:ワセオケ)とのコラボです。もともと表現活動において音楽に魅力を感じていたのですが、某私立小学校がリコーダーのオンライン合奏をやっている動画を拝見し、とても刺激を受けました。そこにたまたまワセオケの演奏動画を見て、子ども達とコラボしたら面白いものができるのではないかとひらめきました。
2作品コラボをしまして、1つ目は行進曲でも知られる『威風堂々』を6年生がリコーダーで演奏し、それに合わせてワセオケに演奏してもらいました。2つ目は『Believe』を1年生~5年生までがそれぞれ歌ってミックスしたものとワセオケの演奏を合わせました。 この2つのコラボ曲を卒業式で入場と退場の際に流したのですが、とても好評でした。

このワセオケとのコラボで御社の『お助けポータル』※1を活用させていただきました。楽譜を送ったり、テンポの音源、リコーダー演奏や合唱の様子などの動画をワセオケに送る際に、ポータルサイトを利用し、とても助かりました。

※1 お助けポータル:学校のホームページを作るシステムで学校や学年、学級ごとに閉じられたポータルソフト。家庭での学習や課題提示などにも対応

 

 

ワセオケポール

 

―お役に立てて嬉しいです。それではお助けポータルを使用した経緯を教えていただけますか?

 

浦部先生:

EdTechの申請の相談をした時に「お助けポータル」がデータのやりとりに使えるのではないかと伺い、利用することにしました。

 

―お助けポータルはもともと学校のHPを作るシステムで、オープンソースでいろいろな事ができるのですが、ソースコードを知らないと設定が難しいです。でも、今回のように学校さんからの要望がはっきりしていると、こちらもそれに合わせて作ることができます。例えば、子どもが使うことが前提であれば、子どもがわかりやすいようにビジュアルを作るということができます。それぞれの学校の要望に合わせたものを作ることができると一番よいと思います。

  

外部と関わることで発想がダイナミックになり、枠を超えた経験ができる

 

―様々なプロジェクトを実行されましたが、実際に保護者の方の反応はどうでしたか?

 

浦部先生:

世の中的にはいろいろな学校行事が削減される傾向が多かったと思いますが、荏子田小学校はその逆を行ったような感じです。ワセオケとのコラボの他にも、外部企業と連携しながら、プロジェクションマッピングや映画製作を行うなど、できる行事はしっかりとやり、年間行事に入っていない活動も+αで行うことができました。保護者の方からは「この状況でここまで活動を豊かにしてくれてよかった」という意見をいただきました。

 

 

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―浦部先生としてはもっと外部と連携をしながら、子ども達の興味の幅を広げていきたいというお考えでしょうか。

 

浦部先生:

学校の中でできる活動もありますが、学校外の方と関わらないとできない体験もたくさんあります。学校外の方と関わる方が新鮮味がありますし、より実感する体感することができるようです。また、子ども達のニーズに合わせてどのような体験であったら学びになるのか、適しているものを選ぶことが大切だと考えています。 なかなか学校内だけだと身になる学びは限界があります。外部と連携すると発想がダイナミックになるのではないかと思います。『教科書と自分』、『クラスの中の自分』という枠を超えることによって違う感覚が生まれるのではないでしょうか。

 

―学級内の先生と子ども達、子ども同士といういつもの関係もとても大事ですが、そこに外部が入ることによって新しい刺激を受けて、活性化されたり、いろいろな人の異なる面が見えたりして成長の機会になると思います。

 

浦部先生:

あとは外部の企業の力があるからできることもあります。質を高め、本物に近づくことができると思います。

 

―今日のインタビューも荏子田小学校さんのように学校の枠に納まらない活動を他の学校もできるようになるといいなという思いがあります。学校によって新しい事に対して負担感もあるのかもしれないですね。

 

浦部先生:

うちの小学校は校長先生の考え方が先進的なので、その部分が大きいのではないかと思います。今年度も引き続き、ワセオケとのコラボなど、外部と連携しながらさまざまな学びを提案していきたいと考えています。

 

 

 

 

 

「規制ではなく使うことで学んでほしい」 港区教育委員会様 ~導入事例インタビューVol.01~



児童生徒の1人1台端末がスタートするなか、先進的な姿勢でICT教育を取り組んでいる港区の事例について伺いました。

端末が日常的な文房具になる時代だからこそ
規制する前に自由に使いこなして欲しい

 

―児童生徒の1人1台端末がスタートし、全国的に端末のカメラが使えないなど、規制をかける自治体が多いなか、港区さんは規制を厳しくされていませんね。

 

港区教育委員会様:

港区では成人向けコンテンツの閲覧制限など最低限の規制にとどめていることもあり、子どもたちがICT機器を学習目的で自由に使いこなせています。例えば小学校では授業支援アプリなどで自分のおすすめ図書を共有したり、空き時間にYou Tubeで折り紙の折り方を見ながら、折り紙で遊んだりとその活用の幅はかなり広いです。今までだったら、卒業式に向けて先生が折り鶴の作り方をアナログで教えていたところ、「調べてやってごらん」と言ったら、子どもたちで調べて折り鶴を作っていました。

 

―大人よりも子どもの発想の方が使い方のアイデアも広がりますね。

 

港区教育委員会様:

先生達は「ローマ字入力を3年生ぐらいでやって」と考えていたんですが、1年生の子が音声入力をしていてこちらが驚かされます。

  

―他の自治体はICT機器に関して、かなり厳しく規制をしている印象がありますが、港区はiPadの標準搭載のフィルタリングのみと伺っています。規制を厳しくしないのはなぜですか?

 

港区教育委員会様:

ブラウザのフィルタリングや教育用サーバー以外を飛び出していけないとか、制限をかければかけるほど起動もブラウジングも遅く、学校の授業はリアルタイムで進んでいくのにとても使いにくい。これから先、端末が文房具として当たり前になってくると考えると、使われないのが一番まずい。セキュリティの問題はありますが、そこさえも学んでいくということが大切なのではないかと思います。

 

情報モラル教育は『子どもの指導』、『保護者の指導』、『教員の指導』の3本柱

 

 ―GIGAスクール構想のなかで「情報モラル」をどのように考えていらっしゃいますか?

 

港区教育委員会様:

港区では情報モラルは『子どもの指導』、『保護者の指導』、『教員の指導』の3つがあると考えています。このうち、教員の指導についてはまだまだこれからだと思っています。
これまでは年に一回の情報安全教室で警察など外部の方に来ていただいてSNSの怖さなどを語ってもらうなどしていましたが、あくまでもイベント的なものでした。ですが、これからは日常的に情報モラル教育をやっていかなければいけない。それに対して先生達がどのように授業をやっていくかということが課題だと思います。そのために文科省の学習指導要領の中で情報モラル教育の内容をしっかりと位置付けてもらうと普及しやすいかと感じます。
子どもについては授業でやるものと普段にやるものを平行して学んでいく必要があると思います。また、何か問題が起きた時、タイムリーにどのように指導していくかも課題だと感じています。
保護者については港区はIT系の企業にお勤めの方も多く「これからは使って当たり前のものなので、しっかりと情報モラル教育をやってほしい」と、皆さん口を揃えておっしゃいます。
港区では情報モラルリーフレットを保護者に配布したり、教育委員会で立ち上げているツイッターを活用して積極的に情報発信をしています。

 

港区ツイッター

 

 

―保護者に明確に何を伝えたらいいのかわからないという理由で、積極的に情報発信できない自治体が多いように思います。

 

港区教育委員会様:

港区では学校経由でタブレットルールを配布していますが、やはり情報モラル教育は保護者と一緒にやっていかないといけないと思います。

 

保護者を巻き込んだスタイルの情報モラル教育を

 

―今までは携帯、スマホは家庭の責任という部分が大きく、保護者にも一緒に考えてもらうという必要があったと思います。

 

港区教育委員会様:

今までは教育委員会からの発信が多かったのですが、これからはPTAと一緒に保護者も巻き込みながら、「一緒にやっていこうよ」と呼びかけて情報モラル教育をやっていこうと思っています。

 

―今、保護者会の後などに情報モラル教育の支援をして欲しいという要望が増え、今まで消極的だった自治体も保護者に情報モラル教育を伝えなければという意識が高まっていますが、座談会を開くなど保護者を巻き込んだスタイルは港区さんの特徴だと感じています。

 

港区教育委員会様:

港区はネットリテラシーについて意識が高い保護者の方が多く、PTAが自主的に「情報モラルについて考える会」を開催しているケースもあります。

 

イベント型よりも、日常的な体験型の情報モラル教育を

 

―GIGAスクール構想で1人1台端末の時代になりましたが、これからの情報モラル教育で課題を感じている点はありますか?

 

港区教育委員会様:

標的型攻撃メールの訓練のような情報モラルの訓練が子どもたちにも必要かなと感じています。 今までのイベント型の授業では攻撃メールを紹介しても、子どもたちの記憶に残らないこともある。それでは本当に子どもに身についているか先生方も評価できない。実際その状況がきた時にどう判断するかがわかればいいのかなと思います。

 

―標的型攻撃メールもですが、パスワードの管理方法など子どもたちに対してセキュリティ面も気になりますか?

 

港区教育委員会様:

今までわかりやすいパスワードを皆で一緒に使うなど、まったくパスワードの重要性などは教えていなかったのですが、「子どもや保護者が作ったパスワードじゃないと意味がない」と通知しました。低学年は保護者と一緒に考えてもらいましたが、その他の子どもたちは子ども自身に考えてもらいました。

インタビュー様子

 

 ―手間がかかると思いますが、IDとパスワードの重要性もそこまで考えていらっしゃるとはすごいですね。子どもがパスワードを忘れてしまった時はどうされるのですか?

 

港区教育委員会様:

個人のIDとパスワードは教員が把握しています。 付箋とかにパスワードを書いている子に「こういうことしたらダメなんだよ」と教えています。(という先生が付箋で貼ったりしてるんですけど…笑)

―IDとパスワードについては弊社の『お助けネットクラウド』でも扱っていますが、同サービスを港区さんにはEdTechの時に一緒に導入していただきました。導入の決め手になったのはどんなところでしょうか?

 
港区教育委員会様:

御社の講師の方から『お助けネットクラウド』を紹介してもらい、日常的に触れることができる教材だったことに魅力を感じました。イベント的授業はあくまでもイベントでしかありません。やはり情報モラル授業は定期的にやっていく必要があると考えています。

 

―今年度も実態調査アンケートを行いますが、港区の情報モラル教育の取り組みに実際どのように役立てることができるでしょうか?

 

港区教育委員会様:

例えば、ある中学校の結果で見られた保護者と子供のSNSの意識のズレとか、港区の子どもはSNSに触れている率が高いことがわかってきたので、それに焦点を合わせた情報モラル教育を行っていければと考えています。

「人としてよりよく生きていくことの基本」 川崎市立下平間小学校 樋口先生 ~1人1台端末時代の情報モラル教育インタビューVol.01~

下平間小校長先生
早くから積極的に、情報モラル教育に取り組んでいる川崎市立下平間小学校の樋口校長。今後の学校における情報モラル教育のあるべき姿について伺いました。

学校ごとに異なる意識、だからこその“オーダーメイド

 

ー今年度から、「児童生徒に一人一台端末」がスタートしました。学校現場の準備の様子はいかがでしたか。

 

樋口校長:

急ピッチで準備を進めました。日頃から情報教育に熱心な学校や先生は、「まずは情報モラル教育が重要だ」と言っていましたが、学校ごとに意識は大きく異なりますね。

 

ー御校でも、当社の情報モラル教育の授業や教材ご利用いただいています。 当社の強みは、まず学校の<実態調査>を行い、学校・学年ごとの実態に合わせて<指導案や教材をアレンジし、提供できることです。

 

樋口校長:

そうですね。“オーダーメイド”で対応していただけることは、大手キャリアにはないメリットです。

実態調査・通信イメージ

 

ーこれまでは、情報モラル教育は「各家庭で行うべき」という考えも多かったですよね。 一人一台端末がスタートすると、今後はどうなるでしょうか。

 

樋口校長:

その学校でどれだけICT※を活用しているかで、オーダーメイドの内容が異なってくると思います。1日1回は必ず触らせる、ログインさせる、そういう指導を行っている先生なら、情報モラルの必要性もよくわかっているし、子どもたちの心にぐっと入っていくような教育ができるでしょうね。

※ICT… Information(情報)and Communications(通信) Technology(技術)

 

ー教育ネットでは、子どもに実際に体験させながらどんな問題が起こるのか、どう使えばいいか考えさせる授業を行ってきました。
やはり、実際に使わせることが大事ですね。

 

“情報モラル”をよりよく生きていくための”スキル“に

 

樋口校長:

情報モラルを大切にするということは、人としてよりよく生きていくことの基本になるんだろうなあ。情報モラル教育の必要性をよくわかっている先生は、日頃の指導や、ちょっとした声掛けひとつを見ても力のある先生ですし、びっくりするような素晴らしい情報モラル教育します。

 

ー教育ネットとしては、そういう力のある先生の授業を他の学校にも伝えていきたいんです。
伝えることで、一人でも多くの先生に「うちもやってみよう」と思っていただくことに我々の存在意義があるのかなと考えています。

インタビュー時の様子

樋口校長:

2000年に情報モラルが学習指導要領に盛り込まれた当初は、知識・理解(技能)が中心でした。 次の段階として、情報をどう使っていくか、思考・判断が重要になってくる。 さらにその次のステップでは、情報を使って、どんな豊かな人生を送っていくかと考えられるところまで目指す。そういう段階を踏む必要があると思います。 さらに言えば、学校教育だけで終わりではなく、社会に出てからも、よりよく生きていくためには必要なスキルになっていくでしょう。 これまでも言われてきたことですが、それがより現実的になってきました。

 

ー「情報モラル」は良い面も悪い面も、両面を教えることで、思考力・判断力がついていくと思っているのですが、学校現場からは「危険性について教えてほしい」という要望が強いんです…。

 

樋口校長:

これからは変わっていくでしょうね。
たとえば、動画を作ってYouTubeにアップするといった授業をしたときに、どういう動画が世の中の人に受け入れられるのかを考えさせ、「自分だけいいと思ってもだめなんだ」と気づかせる。それって既に情報モラル教育ですよね。
そんなふうに、情報モラルという授業があるというより、様々な教科の中に自然と情報モラル教育が入ってくる。そうあるべきだと思いますね。
そのためには、教員も相当な力量が必要ですが…。

 

情報モラル教育の現状とこれから

 

ー教育ネットでは、情報発信を疑似体験させるツールで、実際に書き込みや投稿をしながら、体験による学びを大切にしています。 これからは、一人一台端末で教育用のクラウド※画面を見ながら、クラス内、学校内だけといった安全な環境で、情報発信をさせる授業ができる訳です。すると、いいコメントをもらえたり、たくさん閲覧してもらえたり、良い体験もたくさんできますよね。 そういう「良い面」も体験させながら学ばせていきたいんです。

※クラウド…安全な環境下で、情報発信の疑似体験ができる教育用サービス

樋口校長:

ぜひやってみたいのですが、関心が高く力量のある一部の先生に限られるのではないかと…。 何が一番のネックかというと、教科で教えるべきことは減っていない、授業時数も増えていない、それなのに情報モラルはやらなければならない。 また、一人一台端末になったことで、それに慣れるために10時間や20時間は必要になる。時間が足りないのです。

クラウド上に投稿している子どもたち

クラウド上に投稿している子ども達の様子

 

ー今、「従来の情報モラル教育は間違っていた、これからは“デジタルシチズンシップ※”だ」という意見も聞かれます。今までの情報モラルは、光と影の両面ある中でたまたま影の部分だけが強調されてきただけのことで、従来の情報モラル教育が間違っていたわけではないと思うのですが、先生はどう思われますか?

※デジタルシチズンシップ…情報技術の利用における適切で責任ある行動規範

樋口校長:

間違いとは言えないんじゃないかな。細かい部分を見れば、今の時代とは合わないものもあるでしょうけど、そのときは、時代が必要としていたからやらなければならなかった。しかし、10年20年たって振り返ってみたら、別の方法もあったかもしれないと感じる。そういうことは、情報モラルに限らず何にでも起こりうることです。

 

ー情報モラルという言葉自体にネガティブな反応を示す先生もいます。

 

樋口校長:

情報モラルというと、「危険性を教えればいい」と思っている先生は確かにいます。
しかし、そうではなくて、「人間が生きていく上で、情報モラルって大事だし、情報モラルという教科はないけど、あらゆるものに関わっている」ととらえることができれば、変わってくるのではないでしょうか。
もしかしたら、「情報モラル」と言うより「ネットリテラシー」と言ったほうが、特に若い先生にはしっくりくるかもしれません。

 

ーそうですね。確かに「モラル」と言われると、「若い人はモラルがない(常識がない)」といったネガティブな連想する人もいますが、「リテラシー」なら、これから向上していこうとポジティブにとらえられる気がします。

 

樋口校長:

リテラシーという言葉は、様々な分野の知識や活用能力をさし、社会でもよく使われるので、入りやすいと思います。 生きていく上で、相手を嫌な気持にしないことも大事ですし、人と上手にコミュニケーションをしていくことも大事です。 そう考えると、情報モラル=❝生きていくためのリテラシー❞とも言えます。 情報の時間だけでなく、道徳の授業でも、よりよいクラスづくりのためにも使える。 今後は様々な学校教育の中で取り込んでいく必要があるでしょうね。