事例一覧
子ども達主体で開催した第2回校内タイピング大会 ~千葉県柏市大津ケ丘第一小学校~ 【『らっこたん』活用レポート】
―校内タイピング大会」を行うこととなった経緯や理由を教えてください。
佐和先生:
子どもたちが端末を日常的に使い、自己決定・自己調整していく教育が着々と進んでいますが、その際必要になるのが「キーボードで高速入力できるスキル」だと感じています。
例えば、授業中にメモを取る場合、鉛筆でもよいのですが、端末を利用した方がよいこともあります。そう考えるとタイピングスキルの向上は、学校全体の問題として捉えるべきだと思っています。
日常的に端末でタイピングをすることで入力スキルが伸びていくことは、校内で行った調査や文科省の情報活用能力調査の結果などからわかっています。しかし、追跡調査を行うと、その後伸び悩みがあることもわかっています。その理由は「我流のタイピング」を行っていること、タイピング練習の意欲低下が考えられます。
※文科省 情報活用能力調査の結果 小学生平均文字入力数 15.8文字
そこで「我流のタイピング」に対しては正しいホームポジションを意識しタッチタイピングを習得することが大切だと思いました。
また、タイピング練習の意欲低下に対しては意欲を向上させるために校内タイピング大会を行うのがよいと考えました。
令和5年度にタイピング大会を実施したのですが、今回はGIGAホームページ委員会の子ども達より「またタイピング大会を行いたい」と要望があったため、教育ネットに相談し、子どもたち主体で大会内容を考えてもらうこととなりました。
―タイピング大会の実施内容を教えてください。
佐和先生:
柏市は1・2年生がiPad、3年生からキーボード付き端末(chromebook)を使用するので、タイピング大会の対象学年は3年生以上とし、2024年7月8日~15日で大会を実施しました。第1回では表彰は総合得点(入力文字数)のみでしたが、練習の成果も表彰するために、前回との比較で伸び率が高い子を各学年3位までを表彰する新たな賞を設置しました。
―民間企業とどのようにコラボしたかついて教えてください。
佐和先生:
今回の大会では表彰順位や賞状・参加賞の有無、副賞の内容などについてを、GIGAホームページ委員会の子どもたちに考えてもらい、コラボした教育ネットとオンラインや対面で打合せを実施してもらいました。
上位入賞者には副賞として3Dプリンタで作成されたらっこたんやキーホルダーなどを渡すことになり、教育ネットに用意してもらいました。
なぜそこまでしてもらえたのかというと、
「副賞を用意するなど協力をする代わりに、大会の様子を広報に利用させていただきたい」
という理由を教育ネットから直接子どもたちに伝えてもらいました。こうすることで、子どもたちには社会の仕組みなどを知る機会にもなりました。
<GIGAHP委員会の子ども達からの意見や感想>
―企業との打ち合わせを行って、どのようなことを感じましたか?
子どもたち:
・企業との打ち合わせで、表彰のことや景品まで一緒に考えてもらってすごく良かったです。とても大変な時間を使って学校に来てくださったり、打ち合わせをしてくださったりしていただき本当にありがとうございました。
・事前に質問を考えておいたり、聞かれそうなことを予想したりしてどう答えるのか考えることが大切だと感じました。
・初めて企業の人と話したので緊張しました。
―一緒に景品を企画するという体験はどうでしたか?
子どもたち:
・どんなものを景品としてもらったら嬉しいのか、1〜3位の人だけにあげるのか、それとも参加した人にも景品をあげるのかということを考えながら、企画したのでとても楽しかったです。
・見本を持ってきてくださったり、プリントでわかりやすくしてくださったり、景品を「これでお願いします。」と言ったら、いいお答えをしてくださり本当に嬉しくて考えやすかったです。
・みんなが喜ぶものを企画したりするのは、大変でした。
教育ネットとの打ち合わせの様子 左:オンライン 右:対面
―大会時の子ども達の様子を教えてください。
小澤先生:
朝学習の時間を使って2回ほど一斉に大会コンテンツにチャレンジしてもらいました。さらに良い記録を目指そうと休み時間や家庭でも意欲的に取り組む様子が見られました。
タイピング大会の様子
<大会入賞者からの意見や感想>
―どのようなことに気をつけて練習をしましたか?/前回とくらべて、どのようなことに気をつけて練習しましたか?
子どもたち:
・キーボードを見ないで、正確に練習すること。
・指の位置を間違えないようにしました。
・打ち間違いがないように練習をしました。正確さと速さどちらも頑張りました。
・スピードよりも正確性を意識して練習しました。
―表彰されたときの気持ちを教えてください。
子どもたち:
・毎日練習してよかったなあと思いました
・今回も1位を取れて嬉しい気持ち、また大会が開かれるなら、自分の中の新記録を出せるように努力したい。
・少し正答率が低かった(97%)ので次は100%で1位を取りたい。
・3年生の時も3位だったので少し悔しかった。
・去年は2位だったので、1位になれてとても嬉しかったです。
・自分が表彰されるとは思ってなかったから、嬉しかったです。
表彰の様子
―子ども達主体での大会を実施して、どのような変化や効果がありましたか?
小澤先生:
今回はGIGAホームページ委員会の児童が中心となってポスターの作成、放送での呼びかけ、さらには記念品の打ち合わせまで経験させていただいたことが自信につながったようです。
小林先生:
児童主体で素敵な景品を準備していただいたので、参加児童も意欲や達成感につながったと思います。前回の成績と比較できることもとてもよく、回数を重ねるごとにより効果が高まると感じます。
―今後もタイピング大会を継続して行いたいですか?
佐和先生:
これまで2回タイピング大会を実施しましたが、同じ学年の中でもスキルの個人差あり、その差が大きいことがわかりました。スキルの個人差が大きいと、協働的な学びをクラウド上で行うことは難しくなります。今後はこの個人差をどうやって少なくしていくかが課題です。
そのために、継続してタイピング大会を実施や『らっこたん』の活用を図ることを考えています。
「ハードだけでなく、必要なソフトをしっかりと子ども達に提供したい」 宮城県岩沼市教育委員会様 ~『らっこたん』導入事例インタビューVol.01~
写真:(左)千葉様 (右)百井様
『子どものうちからICT機器を』という思いは、 GIGAスクール構想スタート以前から
タブレットなどのICT機器がどんどん普及する世の中の状況を見て、『子どものうちから触れさせたい』と考えたという教育長 百井 崇さん。そのためにまずは平成25、6年に岩沼市は全教職員にタブレットを配布。その過程で何台かは子ども達も使えるようにしました。
「その当時、私もまだ学校にいたのですが、休み時間に小学校3、4年生の子達が自分でタブレットをテレビに繋いで調整しながら使っていたのです。それを見て、「やっぱり子どもでもできるんだ」と感動しました。」
しかし、多くの子ども達が活用していくためにはやはり教職員が使いこなせるようにならなければなりません。全員に配布はしたが、最初からスムーズにいったわけではなく、導入時はやはり使わない先生もいたよう。その当時の様子について指導係主査 千葉 雄太さんは
「機械が苦手という先生はやはりいましたので、職員会議終了後に、必ずミニ研修会を行うなどし、操作に慣れてもらうようにしていました。」と語ります。
また、宮城県は「MIYAGI Style」として「教科指導におけるICT活用」を推進し、児童生徒のためのICTによる授業改善に取り組んでいます。宮城県教育委員会からも「教員のICT活用能力の向上」を後押ししていることも先生方のICT活用能力向上に結びついているようです。
入力が速いことは、社会に出てからもアドバンテージになる
だからこそ小学1年生から入力を
タブレットでタイピングをする岩沼市の児童
岩沼市には教育ネットの『らっこたん』を導入していただいていますが、タイピングに関してはスキル向上の必要性がうたわれているものの、学校単位や個人で習得すべきものという感覚が強いと思います。なぜ岩沼市で『らっこたん』を導入し、自治体単位でタイピングスキルを向上させていこうと思ったのでしょうか。
「まず、入力は大事ですよね。」と百井さん。「ローマ字を習うのは3年生からですが、そういうところを越えて、1年生からやってもらいましょうと考えました。やはり日本人は、漢字やカタカナとかを使いますから、(諸外国の人と比べると)最初からもうアドバンテージがないわけです。そこを埋めるためには小さい頃からアルファベットに慣らすことが大切。そうして入力速度が速くなれば、例えば大人になった時、仕事でもアドバンテージになると思うんです。そう考えて何かよいタイピングソフトがあれば使いたいと考えていました。」
ちょうどそのタイミングでトライアルの最中だったのが、『らっこたん』。
千葉さんは契約に至ったきっかけを「百井教育長が常々「タイピングって大事だよな」と話していたので、方針を示していると感じ『らっこたん』の今年度の契約に背中を押してもらったと思います。」と教えてくださいました。さらに、「『らっこたん』を契約させていただいたことで、教員にタイピング学習の意識付けをできるというところも、大きな意味があると思います。フリーソフトと違ってきちんと定期的に習熟度などをフィードバックいただくことで教員もタイピング指導がしやすくなると考えています。」と先生方への意識付けの大切さも語ってくれました。
『らっこたん』学習状況グラフ
タイピング+情報モラルが魅力に感じた『らっこたん』
『らっこたん』の魅力について伺ってみると「まず1つ目は広告が出ないこと。子ども達に余計な情報を与えることもないし、気が散らない。2つ目が(デザインが)シンプルであること。ごちゃごちゃしてないっていうところが一番いいなと思いました。3つ目は、情報モラルも学べること。タイピングだけだったらネット上にたくさんありますが、プラス情報モラル学習もセットされているので、これは学校教育において価値があると思いました。」
情報モラルというワードが出ましたので、百井さんは情報の使い方についてどうお考えか伺ってみると
「情報の真偽は難しいですね。インターネットで検索した中で、本当にこれは正しいのか正しくないのか、そこのところを判断できる力をつけさせていきたい。これは普通の学習と同じで、「なぜこうなったのか考える」という比重を多くするのが学習なんですよね。本質的なところをきちんと知る事がモラルにつながると考えます。情報に対する判断は幅広い知見がないとできません。学校にいるからこそ、子どもの情報に対してサジェスチョンできるかとも思います。」
すると千葉さんが「例えば、生徒同士で喧嘩があった時に休み時間などの隙間時間でぱっと指導します。情報モラルについても同じように、学校の学校教育の中で使いながら教えていけたらよいと考えています」と続けてお話してくださいました。
「学校というのは失敗しても、それを訂正するだけの時間はありますから、それを繰り返すことによって血となり肉となり、子供の身についていく、そういう思いがあります。だから最初から駄目じゃなくてやりながら覚えていく。ICT機器の活用を大前提に置いて、やっていきたいと考えています」
『らっこたん』内 情報モラルクイズ
ハードだけでなく、必要なソフトを自治体として揃えていきたい
ICT機器の利活用が大前提の岩沼市。そのうえで、大きな鍵となってくるのがソフトウェアと考えているようです。
「ソフトウェアに関して言えば、例えばパソコンも、ハードは買ったけど、Wordや PowerPointが入ってないとあまり使えないじゃないですか。iPadなどのタブレットもデフォルトで入っているソフトウェアは活用できるけれど、そこにいかに『らっこたん』のような、有用なソフトウェアを入れるかが課題だと思います。また今後もそういった教育ソフトウェアはアップデート、更新しながら、必要なものをしっかり教育委員会として揃えていく必要があると考えています。」
このように百井さんが語ってくださった言葉からも岩沼市のICT教育に対する熱い信念が伝わってきました。
教育ネットもICT教育をバックアップできるよう、これからも子ども達、先生方に寄り添った製品開発、各種サービスを提供していきたいと考えています。
インタビューにご協力いただいた(左)千葉様(右)百井様
「タイピングスキル向上で子ども達の学びが変わる」 横浜市立茅ケ崎台小学校 今村俊輔先生 ~1人1台端末時代のICT活用インタビューVol.04~
全ての児童が3タイプ/秒、苦手でも2タイプ/秒を目指して
―昨年度5年生の児童に対し、どのようにタイピング指導に取り組まれたのか教えてください。
今村先生:
タイピング練習ソフトで週3回、15分ほどのスキルタイムを利用したり、授業を10分早めに終われたら、その時間を使うなどして練習を行っていました。そのソフトは正確に打つと星3つ、正確じゃないと星2つと評価がつくので、まずは正しく打つことを目指して星3つにしようねと話しました。なおかつ、そのソフトが1秒間で3タイプ以上でクリアとなるので、クリアを目指して頑張っていました。このような練習を3~4カ月に渡り行いました。
―タイピング速度の指標を3タイプ/秒にしたのはどのような経緯があったのでしょうか。
今村先生:
自分で本気でタイピングをやってみたら6タイプ/秒だったのですが、それを踏まえて3タイプ/秒にしてみました。実際に3タイプ/秒は結構速いので、2タイプ/秒くらいがちょうどよいのではと感じています。
2タイプ/秒であれば、3カ月ぐらいでみんなできていたと思います。
苦手な子も練習を継続して、スキル向上を目指すことが大切
―タイピングに苦手意識をもつ子達にはどのように声かけをしましたか?
今村先生:
毎日5人ずつテストを行っていたのですが、テストの結果を表に記録しました。結果を記録することで、例えば、前日が2.35タイプ/秒だったのが、2.34タイプ/秒になったとします。そんな時は「0.01上がったね。」などと声かけをしました。また、星2つだった児童が3つになれば、そこも褒めるなど、個人の伸びた成果を褒めるようにしていました。 最後まで残ってしまった子達に対しては、目標値を2.5タイプ/秒にするなどと目標を下げました。
―子ども達のモチベーションをどのようにキープしたのでしょうか。
今村先生:
半年間、週3回・10分くらいの練習を続けてたのですが、やはり期間が長いので飽きると思うんです。でも、目に見えて自分の速度が上がってくるので、モチベーションが上がったと思います。途中、中だるみで嫌になることもあったと思うのですが、繰り返していれば上がっていきます。
苦手なところがある時は練習モードで苦手なところを練習する。そうすることで苦手を得意にしていけば、モチベーションは保てると思います。
―苦手な子はどれくらいでクリアできましたか?
今村先生:
3タイプ/秒を全員がクリアするのに半年かかりました。ピアノなど習っていて得意な子は1カ月~2カ月でクリアできていました。 最初は週5ぐらいのペースでやっていましたが、それを週4→週3と減らしていき、最後は週2になっていましたぐらいのペースでタイピング練習を行っていました。 6年生になった時にタイピングチェックをしたら、2/3が3タイプ/秒をクリアしていしまた。しかし、遅い子は0.8タイプ/秒という子もいましたがその子達にも「苦手なところを練習すれば速くなるよ」と励ましていました。 苦手な子達も継続して練習することで底上げしていくことが大切だと思います。
タイピングが上達することで、学びの幅を広げることができる
―先生がタイピング指導を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
今村先生:
タイピングが遅いと検索もスムーズにできないし、文章も速く打つことができないので、必要性を感じました。
―タイピング指導を取りいれたことで目に見えた変化はありましたか?
今村先生:
タイピングの速度が上がると、鉛筆で書くよりも文字は早く打てます。そうすることで活動の幅を広げることができます。
ただし、中途半端な速度の時は手書きとタイピングを併用しています。現在でも作文の時などに手書きも認めています。
―別に手書きでもいいよという方針の先生もいらっしゃいます。それについてはどう思いますか。
今村先生:
ホワイトボードに書いたものを共有するなどもよいのですが、データ共有などはタイピングしないとできないので、タイピングができることによって、小学生でも学習の幅が広がりますよね。検索するのも早くできるようになります。
―苦手で手書きを選ぶのか、打てるけど手書きの良さを知っていて手書きを選ぶのかで違うと思うのですが。苦手で手書きにしてしまうのは、子どもにとってあまりよくないのかなと思いますが、いかがですか。
今村先生:
おっしゃるとおりですね。
―タイピングができないとタブレットの機能をフルに活用することができない。ということは子どもの可能性に影響が出てしまいますね。
今村先生:
おっしゃるとおり、タイピングはマストだと思います。
タイピングができるとタブレットの利用時間が増えて、自分の表現に使ったり、プレゼンを作ったり、動画を撮ったり、学習の幅が色々と広がります。反対に、タイピングができないとタブレットの使用時間が減り、学習の幅が狭くなってしまいます。
学校全体で取り組み、底上げしていくことが大切
―今村先生は早い時期からタイピングの必要性を感じていたと思うのですが、他の先生方をどのように巻き込んでいったのでしょうか。
今村先生:
コロナの影響で休校だった時に課題を最初は紙で出していたのですが、それだと準備も大変ですし、丸つけもできない。そんな時、若い先生を中心にAI型教材『キュビナ』を利用して配信してはどうだろうという意見が出て、そうすることにしました。でも、キュビナで課題をやるためにはタイピングスキルも必要ということで、タイピング練習ソフトも子ども達に紹介しました。
―なぜ全校でタイピングスキル調査をやったのですか?
今村先生:
調査結果を見ることで先生達がタイピングの速度が遅いことにデータを見て気づくことができます。タイピングを使って授業をするとなった時にデータを見て、「この入力速度だとできないですよね。底上げする必要がありますね」などとアドバイスすることができます。調査の結果は伝える時の根拠になります。
―例えば、4月から毎日5分、10分でタイピングの練習をスタートして、夏ぐらいには底上げができて、学習の幅が広がるとよいですね。
今村先生:
卒業文集も打っていたと思うのですが、データで提出できる機能があります。データで提出するとなると、タイピングが絶対に必要になってきます。もしも、今後卒業文集をデータで提出することになれぱ、6年生でタイピングが遅いままだと苦労します。タイピングをやらなければいけないきっかけ、意識づけになるのではないかと思います。
【全国統一タイピングスキル調】
調査内容
【全国統一タイピングスキル調査 結果レポート】
1分間の入力文字数 入力正タイプ率
タイピングのメリット、手書きのメリットを理解して活用するのがベスト
―タイピングスキルが向上して、実際によかったという具体例などあれば教えてください。
今村先生:
児童に作文を読んでもらって他の児童にタブレットを使って1~2分で100字ほどのコメントを書いてもらうこともあります。
もしこの時、5分ぐらい時間を使うのであれば、タイピングが速くなくてもよいのかもしれませんが、1~2分だとある程度の速度が求められます。
今までだと、作文を読んだ後に感想を答えてもらう場合、挙手してもらって3、4人に感想を述べてもらっていました。ですが、タブレットで感想を書いてもらうことで、全員の感想を知ることができるのはタイピングの良さだと思います。
―タイピングスキルが向上すると、学びの場面でどう反映されるのか、他の先生方にわかりやすい基準を教えていただきたいと思います。
今村先生:
1タイプ/秒だと1分間に30文字、2分間で60文字。だとすると僕がやりたい授業には速さが不足しています。
2タイプ/秒だと1分間に60文字、2分間で120文字となり、これくらいの速度だと僕が思い描いている授業はできるかと思います。
―タイピングと手書きの使い分けについてはどのようにお考えですか。
今村先生:
前に本で読んだのですが、「iPadやPCは完璧主義者。ノートは書いたものはぐちゃぐちゃかもしれないけれど考えた軌跡が残る。」その違いはあるかもしれないですね。
紙とデジタルもどちらがよい、悪いではなく、ケースバイケースでメリットが大きい方を選べばよいと思います。
インタビューの様子
「らっこたんタイピングシール 誕生の背景」 徳島県上板町立高志小学校 中川斉史先生 ~1人1台端末時代のICT活用インタビューVol.03~
タイピングスキルの向上には、正しいホームポジションが大切です。
教育ネットでは子ども達がホームポジションを意識しやすいよう工夫をした
キーボード用『らっこたんタイピングシール』を作成しました。
今回はシールを監修していただいた上板町立高志小学校 中川斉史先生にシール誕生の背景などについてお話していただきました。
・低学年からタイピングの練習をする必要性
低学年でも自分の考えや意見を何らかの形で、GIGA端末に書く機会が増えてきました。低学年の子ども達は、文字入力がまだできないため、ペンで直接文字を書いたり、文字認識のパレットなどを使ったりしていると思います。多くの学校では、これまで国語科でのローマ字の学習に合わせて、3年生でキーボードを使った文字入力指導を始めるカリキュラムにしている場合が多いと思いますが、1人1台のGIGA端末が整備されたことにより、それらが変わる可能性があります。つまり、1人1台端末によって、自力で練習できる環境が整っているということになります。 タイピングは「練習」の要素を多く含むため、個人差が大きくなりがちです。ですが、取り組める子からどんどんチャレンジできる仕組みがあると、タイピングスキルが向上し、結果として、自分の思いをキーボードを使って表現できるようになると思います。
・母音と子音の関係の理解と、正しいホームポジションがタイピングスキル向上のカギ
教職について30年以上となりますが、これまで多くの子ども達にローマ字による文字入力の初期指導を行ってきました。そのときに大事にしていたことは、母音と子音の関係をしっかりと理解させることと、使う指を意識させたホームポジションでした。それらがしっかり理解できることは、ローマ字の仕組みを理解することであり、全ての指を使って文字入力をスムーズに行うことができる事につながります。
母音については、一斉指導で一時間かけて行いますが、そのあとは子音との組み合わせであるということを教えます。あとは、個人差があるため、自力で学習する方法が必要です。どの指がどの子音のキーを押さえるかということを「自分で」確かめながら操作するためには、子音を示したシールが必要だと思うようになり、このシールのアイディアを思いつきました。
『らっこたんシール』
・自力で練習し、みるみるうちに文字入力ができるようになっていました
このシールのアイディアは、いくつかのバージョンがあり、2015年頃から試行錯誤し、今の形に至りました。シールを貼った特にローマ字入力をやり始めた学年の様子を見ていると、最初に数時間の指導をしましたが、その後は自力で練習し、みるみるうちに文字入力ができるようになっていました。そして、文字入力の練習と並行して、普段の学習で文字入力をする機会をたくさん用意することが、実はとても大切だと考えます。タイピングの練習ばかりしていても、「思考が文字になる」というレベルには至らないからです。
ですので、練習するためのシールという手だてと、自分で目標を決めて取り組める仕組み、そして、それらを活かして文字を入力する機会をたくさん増やすことで、子ども達のタイピングが実用レベルでスムーズになっていくことを期待しています。さらに、タイピングスキル向上が子供達の情報活用能力向上につながっていけたらいいと思っています。
ホームポジションを意識して『らっこたん』でタイピング練習
「外部との連携で新しい学びを創造」 横浜市立荏子田小学校 浦部先生 青木校長先生 ~1人1台端末時代のICT活用インタビューVol.02~
外部の力を借りながら活動することで、
より自由な発想で、表現の場を提供したい
―外部と連携しながら様々な学習活動や卒業制作を行った経緯やその当時の思いなどをお聞かせください。
浦部先生:
まず学年の最初に、コロナ禍の影響により色々な制限があり、子ども達が我慢をする場面が多かったのですが、そんな中でも「自分の思いを自由に表現できる活動を年間通してしていきたいね」と担任間で話していました。そのためには学校だけの力ではなく、外部の力を借りながら活動することでより自由な発想が出てきて、表現の場も確保できるのではないかと考えました。
早稲田大学交響楽団とコラボしてオンライン演奏会を実現
浦部先生:
外部と連携して活動したプロジェクトの一つが早稲田大学交響楽団(通称:ワセオケ)とのコラボです。もともと表現活動において音楽に魅力を感じていたのですが、某私立小学校がリコーダーのオンライン合奏をやっている動画を拝見し、とても刺激を受けました。そこにたまたまワセオケの演奏動画を見て、子ども達とコラボしたら面白いものができるのではないかとひらめきました。
2作品コラボをしまして、1つ目は行進曲でも知られる『威風堂々』を6年生がリコーダーで演奏し、それに合わせてワセオケに演奏してもらいました。2つ目は『Believe』を1年生~5年生までがそれぞれ歌ってミックスしたものとワセオケの演奏を合わせました。 この2つのコラボ曲を卒業式で入場と退場の際に流したのですが、とても好評でした。
このワセオケとのコラボで御社の『お助けポータル』※1を活用させていただきました。楽譜を送ったり、テンポの音源、リコーダー演奏や合唱の様子などの動画をワセオケに送る際に、ポータルサイトを利用し、とても助かりました。
※1 お助けポータル:学校のホームページを作るシステムで学校や学年、学級ごとに閉じられたポータルソフト。家庭での学習や課題提示などにも対応
―お役に立てて嬉しいです。それではお助けポータルを使用した経緯を教えていただけますか?
浦部先生:
EdTechの申請の相談をした時に「お助けポータル」がデータのやりとりに使えるのではないかと伺い、利用することにしました。
―お助けポータルはもともと学校のHPを作るシステムで、オープンソースでいろいろな事ができるのですが、ソースコードを知らないと設定が難しいです。でも、今回のように学校さんからの要望がはっきりしていると、こちらもそれに合わせて作ることができます。例えば、子どもが使うことが前提であれば、子どもがわかりやすいようにビジュアルを作るということができます。それぞれの学校の要望に合わせたものを作ることができると一番よいと思います。
外部と関わることで発想がダイナミックになり、枠を超えた経験ができる
―様々なプロジェクトを実行されましたが、実際に保護者の方の反応はどうでしたか?
浦部先生:
世の中的にはいろいろな学校行事が削減される傾向が多かったと思いますが、荏子田小学校はその逆を行ったような感じです。ワセオケとのコラボの他にも、外部企業と連携しながら、プロジェクションマッピングや映画製作を行うなど、できる行事はしっかりとやり、年間行事に入っていない活動も+αで行うことができました。保護者の方からは「この状況でここまで活動を豊かにしてくれてよかった」という意見をいただきました。
―浦部先生としてはもっと外部と連携をしながら、子ども達の興味の幅を広げていきたいというお考えでしょうか。
浦部先生:
学校の中でできる活動もありますが、学校外の方と関わらないとできない体験もたくさんあります。学校外の方と関わる方が新鮮味がありますし、より実感する体感することができるようです。また、子ども達のニーズに合わせてどのような体験であったら学びになるのか、適しているものを選ぶことが大切だと考えています。 なかなか学校内だけだと身になる学びは限界があります。外部と連携すると発想がダイナミックになるのではないかと思います。『教科書と自分』、『クラスの中の自分』という枠を超えることによって違う感覚が生まれるのではないでしょうか。
―学級内の先生と子ども達、子ども同士といういつもの関係もとても大事ですが、そこに外部が入ることによって新しい刺激を受けて、活性化されたり、いろいろな人の異なる面が見えたりして成長の機会になると思います。
浦部先生:
あとは外部の企業の力があるからできることもあります。質を高め、本物に近づくことができると思います。
―今日のインタビューも荏子田小学校さんのように学校の枠に納まらない活動を他の学校もできるようになるといいなという思いがあります。学校によって新しい事に対して負担感もあるのかもしれないですね。
浦部先生:
うちの小学校は校長先生の考え方が先進的なので、その部分が大きいのではないかと思います。今年度も引き続き、ワセオケとのコラボなど、外部と連携しながらさまざまな学びを提案していきたいと考えています。
「規制ではなく使うことで学んでほしい」 港区教育委員会様 ~導入事例インタビューVol.01~
端末が日常的な文房具になる時代だからこそ
規制する前に自由に使いこなして欲しい
―児童生徒の1人1台端末がスタートし、全国的に端末のカメラが使えないなど、規制をかける自治体が多いなか、港区さんは規制を厳しくされていませんね。
港区教育委員会様:
港区では成人向けコンテンツの閲覧制限など最低限の規制にとどめていることもあり、子どもたちがICT機器を学習目的で自由に使いこなせています。例えば小学校では授業支援アプリなどで自分のおすすめ図書を共有したり、空き時間にYou Tubeで折り紙の折り方を見ながら、折り紙で遊んだりとその活用の幅はかなり広いです。今までだったら、卒業式に向けて先生が折り鶴の作り方をアナログで教えていたところ、「調べてやってごらん」と言ったら、子どもたちで調べて折り鶴を作っていました。
―大人よりも子どもの発想の方が使い方のアイデアも広がりますね。
港区教育委員会様:
先生達は「ローマ字入力を3年生ぐらいでやって」と考えていたんですが、1年生の子が音声入力をしていてこちらが驚かされます。
―他の自治体はICT機器に関して、かなり厳しく規制をしている印象がありますが、港区はiPadの標準搭載のフィルタリングのみと伺っています。規制を厳しくしないのはなぜですか?
港区教育委員会様:
ブラウザのフィルタリングや教育用サーバー以外を飛び出していけないとか、制限をかければかけるほど起動もブラウジングも遅く、学校の授業はリアルタイムで進んでいくのにとても使いにくい。これから先、端末が文房具として当たり前になってくると考えると、使われないのが一番まずい。セキュリティの問題はありますが、そこさえも学んでいくということが大切なのではないかと思います。
情報モラル教育は『子どもの指導』、『保護者の指導』、『教員の指導』の3本柱
―GIGAスクール構想のなかで「情報モラル」をどのように考えていらっしゃいますか?
港区教育委員会様:
港区では情報モラルは『子どもの指導』、『保護者の指導』、『教員の指導』の3つがあると考えています。このうち、教員の指導についてはまだまだこれからだと思っています。
これまでは年に一回の情報安全教室で警察など外部の方に来ていただいてSNSの怖さなどを語ってもらうなどしていましたが、あくまでもイベント的なものでした。ですが、これからは日常的に情報モラル教育をやっていかなければいけない。それに対して先生達がどのように授業をやっていくかということが課題だと思います。そのために文科省の学習指導要領の中で情報モラル教育の内容をしっかりと位置付けてもらうと普及しやすいかと感じます。
子どもについては授業でやるものと普段にやるものを平行して学んでいく必要があると思います。また、何か問題が起きた時、タイムリーにどのように指導していくかも課題だと感じています。
保護者については港区はIT系の企業にお勤めの方も多く「これからは使って当たり前のものなので、しっかりと情報モラル教育をやってほしい」と、皆さん口を揃えておっしゃいます。
港区では情報モラルリーフレットを保護者に配布したり、教育委員会で立ち上げているツイッターを活用して積極的に情報発信をしています。
―保護者に明確に何を伝えたらいいのかわからないという理由で、積極的に情報発信できない自治体が多いように思います。
港区教育委員会様:
港区では学校経由でタブレットルールを配布していますが、やはり情報モラル教育は保護者と一緒にやっていかないといけないと思います。
保護者を巻き込んだスタイルの情報モラル教育を
―今までは携帯、スマホは家庭の責任という部分が大きく、保護者にも一緒に考えてもらうという必要があったと思います。
港区教育委員会様:
今までは教育委員会からの発信が多かったのですが、これからはPTAと一緒に保護者も巻き込みながら、「一緒にやっていこうよ」と呼びかけて情報モラル教育をやっていこうと思っています。
―今、保護者会の後などに情報モラル教育の支援をして欲しいという要望が増え、今まで消極的だった自治体も保護者に情報モラル教育を伝えなければという意識が高まっていますが、座談会を開くなど保護者を巻き込んだスタイルは港区さんの特徴だと感じています。
港区教育委員会様:
港区はネットリテラシーについて意識が高い保護者の方が多く、PTAが自主的に「情報モラルについて考える会」を開催しているケースもあります。
イベント型よりも、日常的な体験型の情報モラル教育を
―GIGAスクール構想で1人1台端末の時代になりましたが、これからの情報モラル教育で課題を感じている点はありますか?
港区教育委員会様:
標的型攻撃メールの訓練のような情報モラルの訓練が子どもたちにも必要かなと感じています。 今までのイベント型の授業では攻撃メールを紹介しても、子どもたちの記憶に残らないこともある。それでは本当に子どもに身についているか先生方も評価できない。実際その状況がきた時にどう判断するかがわかればいいのかなと思います。
―標的型攻撃メールもですが、パスワードの管理方法など子どもたちに対してセキュリティ面も気になりますか?
港区教育委員会様:
今までわかりやすいパスワードを皆で一緒に使うなど、まったくパスワードの重要性などは教えていなかったのですが、「子どもや保護者が作ったパスワードじゃないと意味がない」と通知しました。低学年は保護者と一緒に考えてもらいましたが、その他の子どもたちは子ども自身に考えてもらいました。
―手間がかかると思いますが、IDとパスワードの重要性もそこまで考えていらっしゃるとはすごいですね。子どもがパスワードを忘れてしまった時はどうされるのですか?
港区教育委員会様:
個人のIDとパスワードは教員が把握しています。 付箋とかにパスワードを書いている子に「こういうことしたらダメなんだよ」と教えています。(という先生が付箋で貼ったりしてるんですけど…笑)
―IDとパスワードについては弊社の『お助けネットクラウド』でも扱っていますが、同サービスを港区さんにはEdTechの時に一緒に導入していただきました。導入の決め手になったのはどんなところでしょうか?
港区教育委員会様:
御社の講師の方から『お助けネットクラウド』を紹介してもらい、日常的に触れることができる教材だったことに魅力を感じました。イベント的授業はあくまでもイベントでしかありません。やはり情報モラル授業は定期的にやっていく必要があると考えています。
―今年度も実態調査アンケートを行いますが、港区の情報モラル教育の取り組みに実際どのように役立てることができるでしょうか?
港区教育委員会様:
例えば、ある中学校の結果で見られた保護者と子供のSNSの意識のズレとか、港区の子どもはSNSに触れている率が高いことがわかってきたので、それに焦点を合わせた情報モラル教育を行っていければと考えています。
「人としてよりよく生きていくことの基本」 川崎市立下平間小学校 樋口先生 ~1人1台端末時代の情報モラル教育インタビューVol.01~
学校ごとに異なる意識、だからこその“オーダーメイド
ー今年度から、「児童生徒に一人一台端末」がスタートしました。学校現場の準備の様子はいかがでしたか。
樋口校長:
急ピッチで準備を進めました。日頃から情報教育に熱心な学校や先生は、「まずは情報モラル教育が重要だ」と言っていましたが、学校ごとに意識は大きく異なりますね。
ー御校でも、当社の情報モラル教育の授業や教材ご利用いただいています。 当社の強みは、まず学校の<実態調査>を行い、学校・学年ごとの実態に合わせて<指導案や教材をアレンジし、提供できることです。
樋口校長:
そうですね。“オーダーメイド”で対応していただけることは、大手キャリアにはないメリットです。
ーこれまでは、情報モラル教育は「各家庭で行うべき」という考えも多かったですよね。 一人一台端末がスタートすると、今後はどうなるでしょうか。
樋口校長:
その学校でどれだけICT※を活用しているかで、オーダーメイドの内容が異なってくると思います。1日1回は必ず触らせる、ログインさせる、そういう指導を行っている先生なら、情報モラルの必要性もよくわかっているし、子どもたちの心にぐっと入っていくような教育ができるでしょうね。
※ICT… Information(情報)and Communications(通信) Technology(技術)
ー教育ネットでは、子どもに実際に体験させながらどんな問題が起こるのか、どう使えばいいか考えさせる授業を行ってきました。
やはり、実際に使わせることが大事ですね。
“情報モラル”をよりよく生きていくための”スキル“に
樋口校長:
情報モラルを大切にするということは、人としてよりよく生きていくことの基本になるんだろうなあ。情報モラル教育の必要性をよくわかっている先生は、日頃の指導や、ちょっとした声掛けひとつを見ても力のある先生ですし、びっくりするような素晴らしい情報モラル教育します。
ー教育ネットとしては、そういう力のある先生の授業を他の学校にも伝えていきたいんです。
伝えることで、一人でも多くの先生に「うちもやってみよう」と思っていただくことに我々の存在意義があるのかなと考えています。
樋口校長:
2000年に情報モラルが学習指導要領に盛り込まれた当初は、知識・理解(技能)が中心でした。 次の段階として、情報をどう使っていくか、思考・判断が重要になってくる。 さらにその次のステップでは、情報を使って、どんな豊かな人生を送っていくかと考えられるところまで目指す。そういう段階を踏む必要があると思います。 さらに言えば、学校教育だけで終わりではなく、社会に出てからも、よりよく生きていくためには必要なスキルになっていくでしょう。 これまでも言われてきたことですが、それがより現実的になってきました。
ー「情報モラル」は良い面も悪い面も、両面を教えることで、思考力・判断力がついていくと思っているのですが、学校現場からは「危険性について教えてほしい」という要望が強いんです…。
樋口校長:
これからは変わっていくでしょうね。
たとえば、動画を作ってYouTubeにアップするといった授業をしたときに、どういう動画が世の中の人に受け入れられるのかを考えさせ、「自分だけいいと思ってもだめなんだ」と気づかせる。それって既に情報モラル教育ですよね。
そんなふうに、情報モラルという授業があるというより、様々な教科の中に自然と情報モラル教育が入ってくる。そうあるべきだと思いますね。
そのためには、教員も相当な力量が必要ですが…。
情報モラル教育の現状とこれから
ー教育ネットでは、情報発信を疑似体験させるツールで、実際に書き込みや投稿をしながら、体験による学びを大切にしています。 これからは、一人一台端末で教育用のクラウド※画面を見ながら、クラス内、学校内だけといった安全な環境で、情報発信をさせる授業ができる訳です。すると、いいコメントをもらえたり、たくさん閲覧してもらえたり、良い体験もたくさんできますよね。 そういう「良い面」も体験させながら学ばせていきたいんです。
※クラウド…安全な環境下で、情報発信の疑似体験ができる教育用サービス
樋口校長:
ぜひやってみたいのですが、関心が高く力量のある一部の先生に限られるのではないかと…。 何が一番のネックかというと、教科で教えるべきことは減っていない、授業時数も増えていない、それなのに情報モラルはやらなければならない。 また、一人一台端末になったことで、それに慣れるために10時間や20時間は必要になる。時間が足りないのです。
クラウド上に投稿している子ども達の様子
ー今、「従来の情報モラル教育は間違っていた、これからは“デジタルシチズンシップ※”だ」という意見も聞かれます。今までの情報モラルは、光と影の両面ある中でたまたま影の部分だけが強調されてきただけのことで、従来の情報モラル教育が間違っていたわけではないと思うのですが、先生はどう思われますか?
※デジタルシチズンシップ…情報技術の利用における適切で責任ある行動規範
樋口校長:
間違いとは言えないんじゃないかな。細かい部分を見れば、今の時代とは合わないものもあるでしょうけど、そのときは、時代が必要としていたからやらなければならなかった。しかし、10年20年たって振り返ってみたら、別の方法もあったかもしれないと感じる。そういうことは、情報モラルに限らず何にでも起こりうることです。
ー情報モラルという言葉自体にネガティブな反応を示す先生もいます。
樋口校長:
情報モラルというと、「危険性を教えればいい」と思っている先生は確かにいます。
しかし、そうではなくて、「人間が生きていく上で、情報モラルって大事だし、情報モラルという教科はないけど、あらゆるものに関わっている」ととらえることができれば、変わってくるのではないでしょうか。
もしかしたら、「情報モラル」と言うより「ネットリテラシー」と言ったほうが、特に若い先生にはしっくりくるかもしれません。
ーそうですね。確かに「モラル」と言われると、「若い人はモラルがない(常識がない)」といったネガティブな連想する人もいますが、「リテラシー」なら、これから向上していこうとポジティブにとらえられる気がします。
樋口校長:
リテラシーという言葉は、様々な分野の知識や活用能力をさし、社会でもよく使われるので、入りやすいと思います。 生きていく上で、相手を嫌な気持にしないことも大事ですし、人と上手にコミュニケーションをしていくことも大事です。 そう考えると、情報モラル=❝生きていくためのリテラシー❞とも言えます。 情報の時間だけでなく、道徳の授業でも、よりよいクラスづくりのためにも使える。 今後は様々な学校教育の中で取り込んでいく必要があるでしょうね。