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「入力文字数の増加と姿勢の改善がこんなにも顕著に表れて嬉しい」 川崎市立西生田小学校 【全国実証タッチタイピングプロジェクト参加校インタビュー】
全国実証タッチタイピングプロジェクトに参加している川崎市立西生田小学校3年1組(2024年度)の児童のみなさんにタイピング練習教具「うちかたくん」を利用し、1週間に1回、朝の時間を活用して『らっこたん』の「タッチタイピング習得コース」による練習を約3か月間にわたり実施してもらいました。
「タッチタイピング習得コース」は子どもたちが効率よくタイピングスキルを向上できるよう、ホームポジションを意識し、正しい指使いでタッチタイピングを段階的に習得できるよう設計したコースです。
練習前には正しい姿勢やホームポジションの場所など正しいタイピングを行うためのポイントを子どもたちに伝え正確に入力することや正しい姿勢を意識させつつ指にキーボードの場所を覚えさせるために「うちかたくん」を利用し、何回も練習を行ってもらいました。
3か月間練習を続けた結果、入力文字数の増加や姿勢の改善などの成果が得られました。
【3か月練習を行った子どもたちにインタビュー】
―「うちかたくん」を使って練習してみた感想を教えてください。
児童A:最初はすごく難しかったけど、慣れてくると楽しくなってきた。
児童B:最初は難しいと思ってたけど、やっているうちに指とか慣れてきて、見えなくてもちょっと打てるようになってすごく楽しかったです。
児童C:最初やってる時は星1ぐらいもいけないぐらいだったけど、どんどんやっていくうちにいろんなところが星2になってきたり、星3も頑張れそうになってきて楽しかった。
―「うちかたくん」を使って練習をする前と後で変わったことはありますか?
児童A:最初はうちかたくんなしでもあんまり打てなくて、うちかたくん使った後は上手になった。
児童B:うちかたくん使う前は指もAのところが薬指とかになってたから、もう見ないでやったら小指になったりして、それが変わっていろんな指使って打てるようになってきました。
児童C:やっていくうちにどんどん小指とか人差し指とか速く打てるようになってきました。
―いろんな指を使ってタイピングをする時とそうでない時だとどちらがうちやすいですか?
児童B:最初やる前は、指とか絡まってるような感じがして、でも直していくとすんなり速く打てるようになった。
―うちかたくんを使って練習をしてからは、タイピングするときにキーボードとタブレットの画面、どっちのほうを見ることが多くなった?
児童C:画面、ばっかり見てる気がしてる。
児童B:画面ばっかり見ててうちかたくんつけると全然見えないから、絶対画面のほうが見てる気がする。
児童A:画面の方。キーボードも画面もどっちも見てると大変でうちかたくんを使うと画面だけ見れるから楽でいい。うちかたくんを使ってなかったらちらほらちらほらちょっとだけ(キーボードの方を)見てる。でも、画面の方が多い。
【川崎市立西生田小学校 樋口彰校長先生・3年1組担任(2024年度)篠原理恵先生 インタビュー】
―うちかたくんを使ってタッチタイピング練習を行ってみていかがでしたか?
篠原先生:1分間あたりの文字入力数が右にずれている(タイピングスキルの向上と底上げができている)というのはすごく嬉しいと思いました。
篠原先生:また、この写真見て姿勢は本当にこんなに顕著に(変化が)表れるものなのかと思いました。
篠原先生:うちかたくんを使って練習するときにうちのクラスでは書写の姿勢と絡めて、合言葉みたいに決めて「足はちゃんとつけるんだよ。足はぺったん、背中はピン、お腹と背中にグー 一つ」、本当だったら「紙を押さえてさあ書こう」と書写の教科書には載ってますが(その代わりに)「ホームポジションに人差し指を置いて始めるよ」その合言葉を言ってからやってたから、それを言わずに「はい、GIGA開いて、授業中どうぞ」って言ってしまうとまた猫背に戻ったりもあるのかなと思いましたが、物(うちかたくん)が一つあるだけで意識ってすごく変わるということがよく分かりました。
樋口校長先生:それなりに成果はあるということなので、集中してやればもっと成果が出るのかもしれないけど、それだとあまり意味ないかなっていろいろな学校教育の教育活動全体の中に、これ(タイピング練習)が本当に少し載っているだけだから1週間に一度10分でそれで十分だと思う。こういう経験がしてあるか、してないかが大きいかなって成果が出た出ないよりも、こういうことを知らないで6年生とか大人になる人も結構いると思う。
―子どもたちがホームポジションや正しい姿勢・指使いなどについて知った上で練習を行うことがどれ位、大切だと思いますか?
篠原先生:私は以前に担任を持ったのが高学年で今回3年生の担任になった時に、高学年だったら、GIGA(端末)ですぐ振り返りできるのに、紙を配って書くのを待たなきゃいけない時間がもどかしいと感じることが年度初めはあったのですが、GIGA(端末)に慣れていって、どんどん扱うスピードが速くなっているというところにすごく便利さを感じています。子供にもよりますが紙での振り返りだと短い文章しか書けない子が、体育の振り返りなどGIGA(端末)でやってもらうとぎっしり書くとかそういったところも見られましたので、書くのが苦手な子にとって(GIGA端末の)活用というのはものすごく影響があるんだなと感じました。
ただ、書く時間よりも、打つ時間の方が多かったりする日もあるのでそう考えると、猫背になって、顔が画面に近くて目が悪くなるとか、ずっと画面を見てたから頭が痛くなってしまうこととかが減るという点では、今回姿勢だったりタッチタイピングのことを教えていただけたのはすごく嬉しいなと思いました。
樋口校長先生:結局、鉛筆で正しく持てなくても、きれいな字を書く子どもも大人もいるし、
箸の持ち方がおかしくても、箸で食べてる人がいるので、そこからいけば、タッチタイピングできなくたって十分やっていけるのですが、でもタッチタイピングを覚えればずっと使うことができます。タッチタイピングを覚えるのはものすごく苦労を要するものではないと思います。例えばスポーツの大会で優勝するぐらいの苦しく辛い練習をする必要はないと思うので、そういう機会を大人が与えてあげられるかどうかがこれから大きくなってくるのかな。やはり知っておいた方がいい。篠原先生も言ったけどやはり健康上、大事だよね。
―うちかたくんを使ってタッチタイピング練習を行う前と後でどのような変化が効果がありましたか?
篠原先生:ホームポジションを1回目に石塚さんに教えていただいて、その前にも少し話したことあったんですけど、みんなの前でしっかりそれが大事なんだよって教えていただいたのは1回目が初めてで、そこから時間が経って慣れてくるとなかなかそういう言葉(ホームポジション)が出なくなることもあったんですけど、「何かGIGA開いて打ってごらん」という時に「ホームポジションだよ」って友達に声かけたり、あと「指のこと気をつけなきゃいけないんだよね」そういった声が子供から出ることもありました。やはり慣れてくると減ってくるっていうところはもちろんあるんですけど、でも子供は今までは知らなかったことなので、そこの声が出てきたっていうのは一番大きい変化かな。
このタイピングの練習だけじゃなく授業の中でも、GIGA端末打つ時間っていうのはもちろん設けてきたんですけど、そうなって少しずつローマ字も覚えられる子も増えてきた。打つことに対して3年生はGIGA端末を使って学習は2年生の時にすごく多かったわけではないと思うので、端末自体への興味だったり、やってみたい気持ちはあったんですけど、ただやり始めたらやっぱり難しい。止まっちゃうっていう子もいたんです。けれどそれも今は打つのがどうしたらいいかわからないで止まるんじゃなくて、なんて打とうか考えてるから止まってる。これは紙と一緒だなと思ったのでそこまで慣れるっていうことは、今年一番大きい変化じゃないかなって思います。
樋口校長先生:思考しながら打ってるってことだよね。
篠原先生:ローマ字がわからないで止まっている子ももちろんいますけど、書く内容で困っている子の方が多いので、そこ(タイピング)に慣れたことは変化かなと思います。
「県全体で統一したサービスを使うことで、同じ基準で数値し、スキル向上を目指す」 鳥取県教育委員会様 【『らっこたん』導入レポート】
写真:澤田様
―『らっこたん』を導入することとなった経緯を教えてください。
澤田様:
学力調査のCBT※化導入を控え、子どもたちのデジタルスキル、特にタイピング能力の重要性がこれまで以上に高まっていました。県が事前に実施したCBTプレ調査でも、タイピング能力の差が結果に大きく影響を与えることが明らかになり、この課題は教職員の間で共通認識となっています。
※CBT(「Computer Based Testing」の頭文字をとった言葉でコンピュータを用いた試験方法)
そのような状況の中、『らっこたん』は、子どもたちのタイピング能力を客観的に測るだけでなく、楽しく練習できるという点で非常に魅力的でした。また、県内の一部の自治体や学校ではすでに『らっこたん』が導入されており、その効果を実感しているという声も聞いていました。特に令和4年度の県で開催したGIGAスクールフェアの『らっこたん』ブースの盛況ぶりは、導入の大きな後押しとなったと思います。
令和4年度 GIGAスクールフェアの『らっこたん』ブースの様子
―『らっこたん』を導入することを決めた理由・決め手を教えてください。
澤田様:
既に導入している学校や自治体から、子どもたちが『らっこたん』をとても楽しんでいるという声をたくさん聞いていました。実際に、タイピングスピードの向上など、目に見える成果が出ているという報告も複数ありました。この良い取り組みを、県内すべての子どもたちに届けたいという思いが、導入を決めた大きな理由です。
加えて、県内には様々な学習環境がある中で、どの学校でも同じように『らっこたん』を活用できるという点が魅力でした。統一したツールを使うことで、子どもたちがスムーズに学習を進めることができ、教員の負担も軽減できるのではないかと考えました。特に、転校や教員の異動があった場合でも、学習の継続性を確保できることは、子どもたちの成長にとって非常に重要だと感じています。
―県全体での導入を決断できた理由を教えてください。
澤田様:
県全体での導入を決断した理由は大きく3つのメリットがあると考えたからです。
1つ目は、すべての学校で、子どもたちがいつでもどこでも、自分のペースでタイピング練習に取り組める環境を整えることができることです。
これまでは、学校によって学習環境が異なり、タイピング練習や指導が十分に行えていない学校もあったかもしれません。しかし、今回の導入により、すべての子どもたちが、公平に質の高いタイピング練習に取り組むことができる環境ができると考えました。
2つ目は、県内のすべての子どもたちのタイピング能力を客観的に把握し、向上させる必要性を感じたからです。『らっこたん』は、各学校、各学年、そして個々の児童生徒のタイピングスキルを、統一した指標で詳細に分析できる点が非常に魅力的でした。これにより、県全体のタイピング能力の現状を正確に把握し、漠然とした感覚ではなく、データに基づいた、より効果的な指導計画を立てることが可能になります。
3つ目は予算面でのメリットです。県内では『らっこたん』を導入したくても、予算が限られて躊躇している学校も少なくありませんでした。そのような状況の中、『100万人無償プロジェクト』という素晴らしい機会を知り、このプロジェクトを活用することで、県内のすべての学校に『らっこたん』を導入できる可能性が見えてきたのです。この機会を逃すわけにはいかないと思い、県全体での導入を決断しました。
―県全体で導入することで期待している変化や子ども達の姿はありますか。
最初にCBTに触れましたが、私たちの目指すところは、CBT調査のためだけにタイピング能力を向上させたいということではありません。
一人一台の端末が普及した今、子どもたちは、授業中だけでなく、様々な場面でデジタルツールを活用して、自分の考えを表現したり、仲間と協働したりすることが求められています。しかし、タイピングが苦手な子は、自分の考えを思うように伝えられず、学習の機会を損なってしまう可能性があります。
『らっこたん』を通じて、子どもたちがスムーズにタイピングできるようになれば、自分の考えをデジタル文書にまとめたり、プレゼンテーションを作成したりといった活動がより身近なものになります。それが、子どもたちの表現力や創造力を育み、主体的に学習に取り組むことができるようになることにつながるのではないかと考えています。
最終的に、私たちは、鳥取県の子どもたちが、デジタル社会を生き抜くために必要な力を身につけ、将来、どんな道に進んでも活躍できる人材に育ってほしいと考えています。そのためにも、タイピング能力の向上は不可欠であると考えています。
―県から各市区町村や学校・子どもたちに発信される際に 工夫された点はありましたか。
澤田様:
GIGAスクール構想がスタートしてからは、市町村教育委員会との定例会を毎月開き、担当者と密に連携をとってきました。その中で、県全体で『らっこたん』を導入するメリットを丁寧に説明すると、市町村の教育委員会の方々とも思いを共有でき、賛同を得てスタートすることができました。ただ導入にあたっては市町村や学校側にとって、導入時の手続きや負担が多すぎると継続が難しいだろうと考え、県でアカウントの一括登録等手続きを行い、なるべく学校がスムーズに使い始められるように工夫しました。
あとはできるだけたくさんの子どもたちに使ってもらえるよう、鳥取県の教職員と子ども用の専用サイトに『らっこたん』の入り口も分かりやすく設定をしました。また、令和6年7月から鳥取県タイピングスキル向上プロジェクト「タイピングマスターへ挑戦!~情報活用能力をアップ~」を開始しました。このプロジェクトのフライヤーを作成し、各市町村の教育委員会や学校に配布し『らっこたん』が利用できることを周知するなど、できるだけ多くの子どもたちに使ってもらえるように意識しました。
鳥取県タイピングスキル向上プロジェクト フライヤー
―導入後、学校からあがった声などがあれば教えてください。
澤田様:
新たに導入となった学校の子どもたちからは「ログインボーナスが嬉しい」、「練習を行うとすぐに結果がわかる」、「友だちと一緒に競争しながら使うのも楽しい」などの声があがっているようです。また、授業中だけでなく、休み時間にも使っていると聞き、とても嬉しく思っています。
また、先生の中にはタイピングをどう教えたらいいのか困っている方もいらっしゃいましたが、『らっこたん』には指導用の動画や資料が充実しているので、それらを活用して「子どもたちと一緒にやってみました」という声もありました。子どもたちと一緒に取り組んでくれたということがとても嬉しかったですね。
―県主催でタイピング大会を開催されましたが、開催の理由を教えてください。
澤田様:
導入初期は学校側が主導で『らっこたん』を使う時間を確保する必要があると考えていますが、それが負担に感じられてしまっては本末転倒です。最終的には子どもたちが自主的に取り組むことが理想ですが、そのためには「楽しい」、「もっとやりたい」と思える工夫が必要です。そこで、全県でタイピング大会を開催することで、大会を目標に頑張ろうとするモチベーションや意欲づけに繋げていきたいと思いました。
大会を目指して練習を続ける中で、知らず知らずのうちにタイピング能力が向上し、それが全体の底上げにつながるのではないかと期待して計画しました。
県主催の鳥取県ジュニアタイピングチャレンジ2024 フライヤー
―鳥取県として中学生のタイピング指標を、文科省よりも20文字ほど多い 約80文字と設定した背景にはどのような思いがありますか。
澤田様:
文部科学省が示した「教育DXに係るKPIの方向性※」を参考にしながら、鳥取県では中学生(2年生)のタイピング目標を80文字/分に設定しました。これは、国が示したKPIを単にクリアするだけでなく、子どもたちがより積極的にデジタルツールを活用し、自分の考えを効果的に表現できるようになってほしいと願いから設定したものです。
タイピング能力は、これからの社会を生き抜く上で欠かせないスキルです。もちろん、60文字/分という国の基準も重要な目安ですが、私たちは、子どもたちの可能性をさらに引き出すために、より高い目標を設定しました。この目標達成に向けて、各学校や家庭と連携し、子どもたちが楽しくタイピング学習に取り組めるような環境づくりを推進していきます。
市町村教育委員会の担当者の方々とも、この目標設定の意図について丁寧に話し合い、共通認識を持つことができました。より高い目標を設定することで、県全体でタイピング能力の向上に対する意識を高め、子どもたちの未来を切り開くための基盤を築きたいと考えています。
※令和6年2月26日第3回デジタル学習基盤特別委員会資料よりhttps://www.mext.go.jp/content/20240222-mxt_jogai01-000033449_51.pdf
<鳥取県 令和6年度タイピング目標値>
※鳥取県教育センターだより【教育DX推進課9月】令和6年度鳥取県タイピングスキル向上プロジェクト「タイピングマスターへ挑戦!~情報活用能力をアップ~」の利用開始についてより
―らっこたんでは、正しい姿勢・指使いで入力できることを目指しています。 正しい姿勢・指使いで入力する重要性をどのように感じていらっしゃいますか。
澤田様:
正しい姿勢と指使いは、単にタイピングのスピードを上げるためだけではなく、将来、子どもたちが様々なデジタル機器をスムーズに使いこなすための土台作りだと考えています。
例えば、鉛筆の持ち方を正しく教えるように、タイピングの基礎をしっかりと身につけることは、学習意欲や集中力にもつながります。特に小学校の先生方は、鉛筆の持ち方や座り方など、基本的な学習習慣を丁寧に指導されます。タイピングの正しい姿勢とホームポジションも、これと同じように、学びの基礎の一つとして指導していただければと考えています。
鳥取県教育センター
教育DX推進課 指導主事 澤田健二様
子ども達主体で開催した第2回校内タイピング大会 ~千葉県柏市大津ケ丘第一小学校~ 【『らっこたん』活用レポート】
―校内タイピング大会」を行うこととなった経緯や理由を教えてください。
佐和先生:
子どもたちが端末を日常的に使い、自己決定・自己調整していく教育が着々と進んでいますが、その際必要になるのが「キーボードで高速入力できるスキル」だと感じています。
例えば、授業中にメモを取る場合、鉛筆でもよいのですが、端末を利用した方がよいこともあります。そう考えるとタイピングスキルの向上は、学校全体の問題として捉えるべきだと思っています。
日常的に端末でタイピングをすることで入力スキルが伸びていくことは、校内で行った調査や文科省の情報活用能力調査の結果などからわかっています。しかし、追跡調査を行うと、その後伸び悩みがあることもわかっています。その理由は「我流のタイピング」を行っていること、タイピング練習の意欲低下が考えられます。
※文科省 情報活用能力調査の結果 小学生平均文字入力数 15.8文字
そこで「我流のタイピング」に対しては正しいホームポジションを意識しタッチタイピングを習得することが大切だと思いました。
また、タイピング練習の意欲低下に対しては意欲を向上させるために校内タイピング大会を行うのがよいと考えました。
令和5年度にタイピング大会を実施したのですが、今回はGIGAホームページ委員会の子ども達より「またタイピング大会を行いたい」と要望があったため、教育ネットに相談し、子どもたち主体で大会内容を考えてもらうこととなりました。
―タイピング大会の実施内容を教えてください。
佐和先生:
柏市は1・2年生がiPad、3年生からキーボード付き端末(chromebook)を使用するので、タイピング大会の対象学年は3年生以上とし、2024年7月8日~15日で大会を実施しました。第1回では表彰は総合得点(入力文字数)のみでしたが、練習の成果も表彰するために、前回との比較で伸び率が高い子を各学年3位までを表彰する新たな賞を設置しました。
―民間企業とどのようにコラボしたかついて教えてください。
佐和先生:
今回の大会では表彰順位や賞状・参加賞の有無、副賞の内容などについてを、GIGAホームページ委員会の子どもたちに考えてもらい、コラボした教育ネットとオンラインや対面で打合せを実施してもらいました。
上位入賞者には副賞として3Dプリンタで作成されたらっこたんやキーホルダーなどを渡すことになり、教育ネットに用意してもらいました。
なぜそこまでしてもらえたのかというと、
「副賞を用意するなど協力をする代わりに、大会の様子を広報に利用させていただきたい」
という理由を教育ネットから直接子どもたちに伝えてもらいました。こうすることで、子どもたちには社会の仕組みなどを知る機会にもなりました。
<GIGAHP委員会の子ども達からの意見や感想>
―企業との打ち合わせを行って、どのようなことを感じましたか?
子どもたち:
・企業との打ち合わせで、表彰のことや景品まで一緒に考えてもらってすごく良かったです。とても大変な時間を使って学校に来てくださったり、打ち合わせをしてくださったりしていただき本当にありがとうございました。
・事前に質問を考えておいたり、聞かれそうなことを予想したりしてどう答えるのか考えることが大切だと感じました。
・初めて企業の人と話したので緊張しました。
―一緒に景品を企画するという体験はどうでしたか?
子どもたち:
・どんなものを景品としてもらったら嬉しいのか、1〜3位の人だけにあげるのか、それとも参加した人にも景品をあげるのかということを考えながら、企画したのでとても楽しかったです。
・見本を持ってきてくださったり、プリントでわかりやすくしてくださったり、景品を「これでお願いします。」と言ったら、いいお答えをしてくださり本当に嬉しくて考えやすかったです。
・みんなが喜ぶものを企画したりするのは、大変でした。
教育ネットとの打ち合わせの様子 左:オンライン 右:対面
―大会時の子ども達の様子を教えてください。
小澤先生:
朝学習の時間を使って2回ほど一斉に大会コンテンツにチャレンジしてもらいました。さらに良い記録を目指そうと休み時間や家庭でも意欲的に取り組む様子が見られました。
タイピング大会の様子
<大会入賞者からの意見や感想>
―どのようなことに気をつけて練習をしましたか?/前回とくらべて、どのようなことに気をつけて練習しましたか?
子どもたち:
・キーボードを見ないで、正確に練習すること。
・指の位置を間違えないようにしました。
・打ち間違いがないように練習をしました。正確さと速さどちらも頑張りました。
・スピードよりも正確性を意識して練習しました。
―表彰されたときの気持ちを教えてください。
子どもたち:
・毎日練習してよかったなあと思いました
・今回も1位を取れて嬉しい気持ち、また大会が開かれるなら、自分の中の新記録を出せるように努力したい。
・少し正答率が低かった(97%)ので次は100%で1位を取りたい。
・3年生の時も3位だったので少し悔しかった。
・去年は2位だったので、1位になれてとても嬉しかったです。
・自分が表彰されるとは思ってなかったから、嬉しかったです。
表彰の様子
―子ども達主体での大会を実施して、どのような変化や効果がありましたか?
小澤先生:
今回はGIGAホームページ委員会の児童が中心となってポスターの作成、放送での呼びかけ、さらには記念品の打ち合わせまで経験させていただいたことが自信につながったようです。
小林先生:
児童主体で素敵な景品を準備していただいたので、参加児童も意欲や達成感につながったと思います。前回の成績と比較できることもとてもよく、回数を重ねるごとにより効果が高まると感じます。
―今後もタイピング大会を継続して行いたいですか?
佐和先生:
これまで2回タイピング大会を実施しましたが、同じ学年の中でもスキルの個人差あり、その差が大きいことがわかりました。スキルの個人差が大きいと、協働的な学びをクラウド上で行うことは難しくなります。今後はこの個人差をどうやって少なくしていくかが課題です。
そのために、継続してタイピング大会を実施や『らっこたん』の活用を図ることを考えています。
「ハードだけでなく、必要なソフトをしっかりと子ども達に提供したい」 宮城県岩沼市教育委員会様 ~『らっこたん』導入事例インタビューVol.01~
写真:(左)千葉様 (右)百井様
『子どものうちからICT機器を』という思いは、 GIGAスクール構想スタート以前から
タブレットなどのICT機器がどんどん普及する世の中の状況を見て、『子どものうちから触れさせたい』と考えたという教育長 百井 崇さん。そのためにまずは平成25、6年に岩沼市は全教職員にタブレットを配布。その過程で何台かは子ども達も使えるようにしました。
「その当時、私もまだ学校にいたのですが、休み時間に小学校3、4年生の子達が自分でタブレットをテレビに繋いで調整しながら使っていたのです。それを見て、「やっぱり子どもでもできるんだ」と感動しました。」
しかし、多くの子ども達が活用していくためにはやはり教職員が使いこなせるようにならなければなりません。全員に配布はしたが、最初からスムーズにいったわけではなく、導入時はやはり使わない先生もいたよう。その当時の様子について指導係主査 千葉 雄太さんは
「機械が苦手という先生はやはりいましたので、職員会議終了後に、必ずミニ研修会を行うなどし、操作に慣れてもらうようにしていました。」と語ります。
また、宮城県は「MIYAGI Style」として「教科指導におけるICT活用」を推進し、児童生徒のためのICTによる授業改善に取り組んでいます。宮城県教育委員会からも「教員のICT活用能力の向上」を後押ししていることも先生方のICT活用能力向上に結びついているようです。
入力が速いことは、社会に出てからもアドバンテージになる
だからこそ小学1年生から入力を
タブレットでタイピングをする岩沼市の児童
岩沼市には教育ネットの『らっこたん』を導入していただいていますが、タイピングに関してはスキル向上の必要性がうたわれているものの、学校単位や個人で習得すべきものという感覚が強いと思います。なぜ岩沼市で『らっこたん』を導入し、自治体単位でタイピングスキルを向上させていこうと思ったのでしょうか。
「まず、入力は大事ですよね。」と百井さん。「ローマ字を習うのは3年生からですが、そういうところを越えて、1年生からやってもらいましょうと考えました。やはり日本人は、漢字やカタカナとかを使いますから、(諸外国の人と比べると)最初からもうアドバンテージがないわけです。そこを埋めるためには小さい頃からアルファベットに慣らすことが大切。そうして入力速度が速くなれば、例えば大人になった時、仕事でもアドバンテージになると思うんです。そう考えて何かよいタイピングソフトがあれば使いたいと考えていました。」
ちょうどそのタイミングでトライアルの最中だったのが、『らっこたん』。
千葉さんは契約に至ったきっかけを「百井教育長が常々「タイピングって大事だよな」と話していたので、方針を示していると感じ『らっこたん』の今年度の契約に背中を押してもらったと思います。」と教えてくださいました。さらに、「『らっこたん』を契約させていただいたことで、教員にタイピング学習の意識付けをできるというところも、大きな意味があると思います。フリーソフトと違ってきちんと定期的に習熟度などをフィードバックいただくことで教員もタイピング指導がしやすくなると考えています。」と先生方への意識付けの大切さも語ってくれました。
『らっこたん』学習状況グラフ
タイピング+情報モラルが魅力に感じた『らっこたん』
『らっこたん』の魅力について伺ってみると「まず1つ目は広告が出ないこと。子ども達に余計な情報を与えることもないし、気が散らない。2つ目が(デザインが)シンプルであること。ごちゃごちゃしてないっていうところが一番いいなと思いました。3つ目は、情報モラルも学べること。タイピングだけだったらネット上にたくさんありますが、プラス情報モラル学習もセットされているので、これは学校教育において価値があると思いました。」
情報モラルというワードが出ましたので、百井さんは情報の使い方についてどうお考えか伺ってみると
「情報の真偽は難しいですね。インターネットで検索した中で、本当にこれは正しいのか正しくないのか、そこのところを判断できる力をつけさせていきたい。これは普通の学習と同じで、「なぜこうなったのか考える」という比重を多くするのが学習なんですよね。本質的なところをきちんと知る事がモラルにつながると考えます。情報に対する判断は幅広い知見がないとできません。学校にいるからこそ、子どもの情報に対してサジェスチョンできるかとも思います。」
すると千葉さんが「例えば、生徒同士で喧嘩があった時に休み時間などの隙間時間でぱっと指導します。情報モラルについても同じように、学校の学校教育の中で使いながら教えていけたらよいと考えています」と続けてお話してくださいました。
「学校というのは失敗しても、それを訂正するだけの時間はありますから、それを繰り返すことによって血となり肉となり、子供の身についていく、そういう思いがあります。だから最初から駄目じゃなくてやりながら覚えていく。ICT機器の活用を大前提に置いて、やっていきたいと考えています」
『らっこたん』内 情報モラルクイズ
ハードだけでなく、必要なソフトを自治体として揃えていきたい
ICT機器の利活用が大前提の岩沼市。そのうえで、大きな鍵となってくるのがソフトウェアと考えているようです。
「ソフトウェアに関して言えば、例えばパソコンも、ハードは買ったけど、Wordや PowerPointが入ってないとあまり使えないじゃないですか。iPadなどのタブレットもデフォルトで入っているソフトウェアは活用できるけれど、そこにいかに『らっこたん』のような、有用なソフトウェアを入れるかが課題だと思います。また今後もそういった教育ソフトウェアはアップデート、更新しながら、必要なものをしっかり教育委員会として揃えていく必要があると考えています。」
このように百井さんが語ってくださった言葉からも岩沼市のICT教育に対する熱い信念が伝わってきました。
教育ネットもICT教育をバックアップできるよう、これからも子ども達、先生方に寄り添った製品開発、各種サービスを提供していきたいと考えています。
インタビューにご協力いただいた(左)千葉様(右)百井様
「タイピングスキル向上で子ども達の学びが変わる」 横浜市立茅ケ崎台小学校 今村俊輔先生 ~1人1台端末時代のICT活用インタビューVol.04~
全ての児童が3タイプ/秒、苦手でも2タイプ/秒を目指して
―昨年度5年生の児童に対し、どのようにタイピング指導に取り組まれたのか教えてください。
今村先生:
タイピング練習ソフトで週3回、15分ほどのスキルタイムを利用したり、授業を10分早めに終われたら、その時間を使うなどして練習を行っていました。そのソフトは正確に打つと星3つ、正確じゃないと星2つと評価がつくので、まずは正しく打つことを目指して星3つにしようねと話しました。なおかつ、そのソフトが1秒間で3タイプ以上でクリアとなるので、クリアを目指して頑張っていました。このような練習を3~4カ月に渡り行いました。
―タイピング速度の指標を3タイプ/秒にしたのはどのような経緯があったのでしょうか。
今村先生:
自分で本気でタイピングをやってみたら6タイプ/秒だったのですが、それを踏まえて3タイプ/秒にしてみました。実際に3タイプ/秒は結構速いので、2タイプ/秒くらいがちょうどよいのではと感じています。
2タイプ/秒であれば、3カ月ぐらいでみんなできていたと思います。
苦手な子も練習を継続して、スキル向上を目指すことが大切
―タイピングに苦手意識をもつ子達にはどのように声かけをしましたか?
今村先生:
毎日5人ずつテストを行っていたのですが、テストの結果を表に記録しました。結果を記録することで、例えば、前日が2.35タイプ/秒だったのが、2.34タイプ/秒になったとします。そんな時は「0.01上がったね。」などと声かけをしました。また、星2つだった児童が3つになれば、そこも褒めるなど、個人の伸びた成果を褒めるようにしていました。 最後まで残ってしまった子達に対しては、目標値を2.5タイプ/秒にするなどと目標を下げました。
―子ども達のモチベーションをどのようにキープしたのでしょうか。
今村先生:
半年間、週3回・10分くらいの練習を続けてたのですが、やはり期間が長いので飽きると思うんです。でも、目に見えて自分の速度が上がってくるので、モチベーションが上がったと思います。途中、中だるみで嫌になることもあったと思うのですが、繰り返していれば上がっていきます。
苦手なところがある時は練習モードで苦手なところを練習する。そうすることで苦手を得意にしていけば、モチベーションは保てると思います。
―苦手な子はどれくらいでクリアできましたか?
今村先生:
3タイプ/秒を全員がクリアするのに半年かかりました。ピアノなど習っていて得意な子は1カ月~2カ月でクリアできていました。 最初は週5ぐらいのペースでやっていましたが、それを週4→週3と減らしていき、最後は週2になっていましたぐらいのペースでタイピング練習を行っていました。 6年生になった時にタイピングチェックをしたら、2/3が3タイプ/秒をクリアしていしまた。しかし、遅い子は0.8タイプ/秒という子もいましたがその子達にも「苦手なところを練習すれば速くなるよ」と励ましていました。 苦手な子達も継続して練習することで底上げしていくことが大切だと思います。
タイピングが上達することで、学びの幅を広げることができる
―先生がタイピング指導を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
今村先生:
タイピングが遅いと検索もスムーズにできないし、文章も速く打つことができないので、必要性を感じました。
―タイピング指導を取りいれたことで目に見えた変化はありましたか?
今村先生:
タイピングの速度が上がると、鉛筆で書くよりも文字は早く打てます。そうすることで活動の幅を広げることができます。
ただし、中途半端な速度の時は手書きとタイピングを併用しています。現在でも作文の時などに手書きも認めています。
―別に手書きでもいいよという方針の先生もいらっしゃいます。それについてはどう思いますか。
今村先生:
ホワイトボードに書いたものを共有するなどもよいのですが、データ共有などはタイピングしないとできないので、タイピングができることによって、小学生でも学習の幅が広がりますよね。検索するのも早くできるようになります。
―苦手で手書きを選ぶのか、打てるけど手書きの良さを知っていて手書きを選ぶのかで違うと思うのですが。苦手で手書きにしてしまうのは、子どもにとってあまりよくないのかなと思いますが、いかがですか。
今村先生:
おっしゃるとおりですね。
―タイピングができないとタブレットの機能をフルに活用することができない。ということは子どもの可能性に影響が出てしまいますね。
今村先生:
おっしゃるとおり、タイピングはマストだと思います。
タイピングができるとタブレットの利用時間が増えて、自分の表現に使ったり、プレゼンを作ったり、動画を撮ったり、学習の幅が色々と広がります。反対に、タイピングができないとタブレットの使用時間が減り、学習の幅が狭くなってしまいます。
学校全体で取り組み、底上げしていくことが大切
―今村先生は早い時期からタイピングの必要性を感じていたと思うのですが、他の先生方をどのように巻き込んでいったのでしょうか。
今村先生:
コロナの影響で休校だった時に課題を最初は紙で出していたのですが、それだと準備も大変ですし、丸つけもできない。そんな時、若い先生を中心にAI型教材『キュビナ』を利用して配信してはどうだろうという意見が出て、そうすることにしました。でも、キュビナで課題をやるためにはタイピングスキルも必要ということで、タイピング練習ソフトも子ども達に紹介しました。
―なぜ全校でタイピングスキル調査をやったのですか?
今村先生:
調査結果を見ることで先生達がタイピングの速度が遅いことにデータを見て気づくことができます。タイピングを使って授業をするとなった時にデータを見て、「この入力速度だとできないですよね。底上げする必要がありますね」などとアドバイスすることができます。調査の結果は伝える時の根拠になります。
―例えば、4月から毎日5分、10分でタイピングの練習をスタートして、夏ぐらいには底上げができて、学習の幅が広がるとよいですね。
今村先生:
卒業文集も打っていたと思うのですが、データで提出できる機能があります。データで提出するとなると、タイピングが絶対に必要になってきます。もしも、今後卒業文集をデータで提出することになれぱ、6年生でタイピングが遅いままだと苦労します。タイピングをやらなければいけないきっかけ、意識づけになるのではないかと思います。
【全国統一タイピングスキル調】
調査内容
【全国統一タイピングスキル調査 結果レポート】
1分間の入力文字数 入力正タイプ率
タイピングのメリット、手書きのメリットを理解して活用するのがベスト
―タイピングスキルが向上して、実際によかったという具体例などあれば教えてください。
今村先生:
児童に作文を読んでもらって他の児童にタブレットを使って1~2分で100字ほどのコメントを書いてもらうこともあります。
もしこの時、5分ぐらい時間を使うのであれば、タイピングが速くなくてもよいのかもしれませんが、1~2分だとある程度の速度が求められます。
今までだと、作文を読んだ後に感想を答えてもらう場合、挙手してもらって3、4人に感想を述べてもらっていました。ですが、タブレットで感想を書いてもらうことで、全員の感想を知ることができるのはタイピングの良さだと思います。
―タイピングスキルが向上すると、学びの場面でどう反映されるのか、他の先生方にわかりやすい基準を教えていただきたいと思います。
今村先生:
1タイプ/秒だと1分間に30文字、2分間で60文字。だとすると僕がやりたい授業には速さが不足しています。
2タイプ/秒だと1分間に60文字、2分間で120文字となり、これくらいの速度だと僕が思い描いている授業はできるかと思います。
―タイピングと手書きの使い分けについてはどのようにお考えですか。
今村先生:
前に本で読んだのですが、「iPadやPCは完璧主義者。ノートは書いたものはぐちゃぐちゃかもしれないけれど考えた軌跡が残る。」その違いはあるかもしれないですね。
紙とデジタルもどちらがよい、悪いではなく、ケースバイケースでメリットが大きい方を選べばよいと思います。
インタビューの様子