「県全体で統一したサービスを使うことで、同じ基準で数値し、スキル向上を目指す」 鳥取県教育委員会様 【『らっこたん』導入レポート】
写真:澤田様
―『らっこたん』を導入することとなった経緯を教えてください。
澤田様:
学力調査のCBT※化導入を控え、子どもたちのデジタルスキル、特にタイピング能力の重要性がこれまで以上に高まっていました。県が事前に実施したCBTプレ調査でも、タイピング能力の差が結果に大きく影響を与えることが明らかになり、この課題は教職員の間で共通認識となっています。
※CBT(「Computer Based Testing」の頭文字をとった言葉でコンピュータを用いた試験方法)
そのような状況の中、『らっこたん』は、子どもたちのタイピング能力を客観的に測るだけでなく、楽しく練習できるという点で非常に魅力的でした。また、県内の一部の自治体や学校ではすでに『らっこたん』が導入されており、その効果を実感しているという声も聞いていました。特に令和4年度の県で開催したGIGAスクールフェアの『らっこたん』ブースの盛況ぶりは、導入の大きな後押しとなったと思います。
令和4年度 GIGAスクールフェアの『らっこたん』ブースの様子
―『らっこたん』を導入することを決めた理由・決め手を教えてください。
澤田様:
既に導入している学校や自治体から、子どもたちが『らっこたん』をとても楽しんでいるという声をたくさん聞いていました。実際に、タイピングスピードの向上など、目に見える成果が出ているという報告も複数ありました。この良い取り組みを、県内すべての子どもたちに届けたいという思いが、導入を決めた大きな理由です。
加えて、県内には様々な学習環境がある中で、どの学校でも同じように『らっこたん』を活用できるという点が魅力でした。統一したツールを使うことで、子どもたちがスムーズに学習を進めることができ、教員の負担も軽減できるのではないかと考えました。特に、転校や教員の異動があった場合でも、学習の継続性を確保できることは、子どもたちの成長にとって非常に重要だと感じています。
―県全体での導入を決断できた理由を教えてください。
澤田様:
県全体での導入を決断した理由は大きく3つのメリットがあると考えたからです。
1つ目は、すべての学校で、子どもたちがいつでもどこでも、自分のペースでタイピング練習に取り組める環境を整えることができることです。
これまでは、学校によって学習環境が異なり、タイピング練習や指導が十分に行えていない学校もあったかもしれません。しかし、今回の導入により、すべての子どもたちが、公平に質の高いタイピング練習に取り組むことができる環境ができると考えました。
2つ目は、県内のすべての子どもたちのタイピング能力を客観的に把握し、向上させる必要性を感じたからです。『らっこたん』は、各学校、各学年、そして個々の児童生徒のタイピングスキルを、統一した指標で詳細に分析できる点が非常に魅力的でした。これにより、県全体のタイピング能力の現状を正確に把握し、漠然とした感覚ではなく、データに基づいた、より効果的な指導計画を立てることが可能になります。
3つ目は予算面でのメリットです。県内では『らっこたん』を導入したくても、予算が限られて躊躇している学校も少なくありませんでした。そのような状況の中、『100万人無償プロジェクト』という素晴らしい機会を知り、このプロジェクトを活用することで、県内のすべての学校に『らっこたん』を導入できる可能性が見えてきたのです。この機会を逃すわけにはいかないと思い、県全体での導入を決断しました。
―県全体で導入することで期待している変化や子ども達の姿はありますか。
最初にCBTに触れましたが、私たちの目指すところは、CBT調査のためだけにタイピング能力を向上させたいということではありません。
一人一台の端末が普及した今、子どもたちは、授業中だけでなく、様々な場面でデジタルツールを活用して、自分の考えを表現したり、仲間と協働したりすることが求められています。しかし、タイピングが苦手な子は、自分の考えを思うように伝えられず、学習の機会を損なってしまう可能性があります。
『らっこたん』を通じて、子どもたちがスムーズにタイピングできるようになれば、自分の考えをデジタル文書にまとめたり、プレゼンテーションを作成したりといった活動がより身近なものになります。それが、子どもたちの表現力や創造力を育み、主体的に学習に取り組むことができるようになることにつながるのではないかと考えています。
最終的に、私たちは、鳥取県の子どもたちが、デジタル社会を生き抜くために必要な力を身につけ、将来、どんな道に進んでも活躍できる人材に育ってほしいと考えています。そのためにも、タイピング能力の向上は不可欠であると考えています。
―県から各市区町村や学校・子どもたちに発信される際に 工夫された点はありましたか。
澤田様:
GIGAスクール構想がスタートしてからは、市町村教育委員会との定例会を毎月開き、担当者と密に連携をとってきました。その中で、県全体で『らっこたん』を導入するメリットを丁寧に説明すると、市町村の教育委員会の方々とも思いを共有でき、賛同を得てスタートすることができました。ただ導入にあたっては市町村や学校側にとって、導入時の手続きや負担が多すぎると継続が難しいだろうと考え、県でアカウントの一括登録等手続きを行い、なるべく学校がスムーズに使い始められるように工夫しました。
あとはできるだけたくさんの子どもたちに使ってもらえるよう、鳥取県の教職員と子ども用の専用サイトに『らっこたん』の入り口も分かりやすく設定をしました。また、令和6年7月から鳥取県タイピングスキル向上プロジェクト「タイピングマスターへ挑戦!~情報活用能力をアップ~」を開始しました。このプロジェクトのフライヤーを作成し、各市町村の教育委員会や学校に配布し『らっこたん』が利用できることを周知するなど、できるだけ多くの子どもたちに使ってもらえるように意識しました。
鳥取県タイピングスキル向上プロジェクト フライヤー
―導入後、学校からあがった声などがあれば教えてください。
澤田様:
新たに導入となった学校の子どもたちからは「ログインボーナスが嬉しい」、「練習を行うとすぐに結果がわかる」、「友だちと一緒に競争しながら使うのも楽しい」などの声があがっているようです。また、授業中だけでなく、休み時間にも使っていると聞き、とても嬉しく思っています。
また、先生の中にはタイピングをどう教えたらいいのか困っている方もいらっしゃいましたが、『らっこたん』には指導用の動画や資料が充実しているので、それらを活用して「子どもたちと一緒にやってみました」という声もありました。子どもたちと一緒に取り組んでくれたということがとても嬉しかったですね。
―県主催でタイピング大会を開催されましたが、開催の理由を教えてください。
澤田様:
導入初期は学校側が主導で『らっこたん』を使う時間を確保する必要があると考えていますが、それが負担に感じられてしまっては本末転倒です。最終的には子どもたちが自主的に取り組むことが理想ですが、そのためには「楽しい」、「もっとやりたい」と思える工夫が必要です。そこで、全県でタイピング大会を開催することで、大会を目標に頑張ろうとするモチベーションや意欲づけに繋げていきたいと思いました。
大会を目指して練習を続ける中で、知らず知らずのうちにタイピング能力が向上し、それが全体の底上げにつながるのではないかと期待して計画しました。
県主催の鳥取県ジュニアタイピングチャレンジ2024 フライヤー
―鳥取県として中学生のタイピング指標を、文科省よりも20文字ほど多い 約80文字と設定した背景にはどのような思いがありますか。
澤田様:
文部科学省が示した「教育DXに係るKPIの方向性※」を参考にしながら、鳥取県では中学生(2年生)のタイピング目標を80文字/分に設定しました。これは、国が示したKPIを単にクリアするだけでなく、子どもたちがより積極的にデジタルツールを活用し、自分の考えを効果的に表現できるようになってほしいと願いから設定したものです。
タイピング能力は、これからの社会を生き抜く上で欠かせないスキルです。もちろん、60文字/分という国の基準も重要な目安ですが、私たちは、子どもたちの可能性をさらに引き出すために、より高い目標を設定しました。この目標達成に向けて、各学校や家庭と連携し、子どもたちが楽しくタイピング学習に取り組めるような環境づくりを推進していきます。
市町村教育委員会の担当者の方々とも、この目標設定の意図について丁寧に話し合い、共通認識を持つことができました。より高い目標を設定することで、県全体でタイピング能力の向上に対する意識を高め、子どもたちの未来を切り開くための基盤を築きたいと考えています。
※令和6年2月26日第3回デジタル学習基盤特別委員会資料よりhttps://www.mext.go.jp/content/20240222-mxt_jogai01-000033449_51.pdf
<鳥取県 令和6年度タイピング目標値>
※鳥取県教育センターだより【教育DX推進課9月】令和6年度鳥取県タイピングスキル向上プロジェクト「タイピングマスターへ挑戦!~情報活用能力をアップ~」の利用開始についてより
―らっこたんでは、正しい姿勢・指使いで入力できることを目指しています。 正しい姿勢・指使いで入力する重要性をどのように感じていらっしゃいますか。
澤田様:
正しい姿勢と指使いは、単にタイピングのスピードを上げるためだけではなく、将来、子どもたちが様々なデジタル機器をスムーズに使いこなすための土台作りだと考えています。
例えば、鉛筆の持ち方を正しく教えるように、タイピングの基礎をしっかりと身につけることは、学習意欲や集中力にもつながります。特に小学校の先生方は、鉛筆の持ち方や座り方など、基本的な学習習慣を丁寧に指導されます。タイピングの正しい姿勢とホームポジションも、これと同じように、学びの基礎の一つとして指導していただければと考えています。
鳥取県教育センター
教育DX推進課 指導主事 澤田健二様