「規制ではなく使うことで学んでほしい」 港区教育委員会様 ~導入事例インタビューVol.01~
端末が日常的な文房具になる時代だからこそ
規制する前に自由に使いこなして欲しい
―児童生徒の1人1台端末がスタートし、全国的に端末のカメラが使えないなど、規制をかける自治体が多いなか、港区さんは規制を厳しくされていませんね。
港区教育委員会様:
港区では成人向けコンテンツの閲覧制限など最低限の規制にとどめていることもあり、子どもたちがICT機器を学習目的で自由に使いこなせています。例えば小学校では授業支援アプリなどで自分のおすすめ図書を共有したり、空き時間にYou Tubeで折り紙の折り方を見ながら、折り紙で遊んだりとその活用の幅はかなり広いです。今までだったら、卒業式に向けて先生が折り鶴の作り方をアナログで教えていたところ、「調べてやってごらん」と言ったら、子どもたちで調べて折り鶴を作っていました。
―大人よりも子どもの発想の方が使い方のアイデアも広がりますね。
港区教育委員会様:
先生達は「ローマ字入力を3年生ぐらいでやって」と考えていたんですが、1年生の子が音声入力をしていてこちらが驚かされます。
―他の自治体はICT機器に関して、かなり厳しく規制をしている印象がありますが、港区はiPadの標準搭載のフィルタリングのみと伺っています。規制を厳しくしないのはなぜですか?
港区教育委員会様:
ブラウザのフィルタリングや教育用サーバー以外を飛び出していけないとか、制限をかければかけるほど起動もブラウジングも遅く、学校の授業はリアルタイムで進んでいくのにとても使いにくい。これから先、端末が文房具として当たり前になってくると考えると、使われないのが一番まずい。セキュリティの問題はありますが、そこさえも学んでいくということが大切なのではないかと思います。
情報モラル教育は『子どもの指導』、『保護者の指導』、『教員の指導』の3本柱
―GIGAスクール構想のなかで「情報モラル」をどのように考えていらっしゃいますか?
港区教育委員会様:
港区では情報モラルは『子どもの指導』、『保護者の指導』、『教員の指導』の3つがあると考えています。このうち、教員の指導についてはまだまだこれからだと思っています。
これまでは年に一回の情報安全教室で警察など外部の方に来ていただいてSNSの怖さなどを語ってもらうなどしていましたが、あくまでもイベント的なものでした。ですが、これからは日常的に情報モラル教育をやっていかなければいけない。それに対して先生達がどのように授業をやっていくかということが課題だと思います。そのために文科省の学習指導要領の中で情報モラル教育の内容をしっかりと位置付けてもらうと普及しやすいかと感じます。
子どもについては授業でやるものと普段にやるものを平行して学んでいく必要があると思います。また、何か問題が起きた時、タイムリーにどのように指導していくかも課題だと感じています。
保護者については港区はIT系の企業にお勤めの方も多く「これからは使って当たり前のものなので、しっかりと情報モラル教育をやってほしい」と、皆さん口を揃えておっしゃいます。
港区では情報モラルリーフレットを保護者に配布したり、教育委員会で立ち上げているツイッターを活用して積極的に情報発信をしています。
―保護者に明確に何を伝えたらいいのかわからないという理由で、積極的に情報発信できない自治体が多いように思います。
港区教育委員会様:
港区では学校経由でタブレットルールを配布していますが、やはり情報モラル教育は保護者と一緒にやっていかないといけないと思います。
保護者を巻き込んだスタイルの情報モラル教育を
―今までは携帯、スマホは家庭の責任という部分が大きく、保護者にも一緒に考えてもらうという必要があったと思います。
港区教育委員会様:
今までは教育委員会からの発信が多かったのですが、これからはPTAと一緒に保護者も巻き込みながら、「一緒にやっていこうよ」と呼びかけて情報モラル教育をやっていこうと思っています。
―今、保護者会の後などに情報モラル教育の支援をして欲しいという要望が増え、今まで消極的だった自治体も保護者に情報モラル教育を伝えなければという意識が高まっていますが、座談会を開くなど保護者を巻き込んだスタイルは港区さんの特徴だと感じています。
港区教育委員会様:
港区はネットリテラシーについて意識が高い保護者の方が多く、PTAが自主的に「情報モラルについて考える会」を開催しているケースもあります。
イベント型よりも、日常的な体験型の情報モラル教育を
―GIGAスクール構想で1人1台端末の時代になりましたが、これからの情報モラル教育で課題を感じている点はありますか?
港区教育委員会様:
標的型攻撃メールの訓練のような情報モラルの訓練が子どもたちにも必要かなと感じています。 今までのイベント型の授業では攻撃メールを紹介しても、子どもたちの記憶に残らないこともある。それでは本当に子どもに身についているか先生方も評価できない。実際その状況がきた時にどう判断するかがわかればいいのかなと思います。
―標的型攻撃メールもですが、パスワードの管理方法など子どもたちに対してセキュリティ面も気になりますか?
港区教育委員会様:
今までわかりやすいパスワードを皆で一緒に使うなど、まったくパスワードの重要性などは教えていなかったのですが、「子どもや保護者が作ったパスワードじゃないと意味がない」と通知しました。低学年は保護者と一緒に考えてもらいましたが、その他の子どもたちは子ども自身に考えてもらいました。
―手間がかかると思いますが、IDとパスワードの重要性もそこまで考えていらっしゃるとはすごいですね。子どもがパスワードを忘れてしまった時はどうされるのですか?
港区教育委員会様:
個人のIDとパスワードは教員が把握しています。 付箋とかにパスワードを書いている子に「こういうことしたらダメなんだよ」と教えています。(という先生が付箋で貼ったりしてるんですけど…笑)
―IDとパスワードについては弊社の『お助けネットクラウド』でも扱っていますが、同サービスを港区さんにはEdTechの時に一緒に導入していただきました。導入の決め手になったのはどんなところでしょうか?
港区教育委員会様:
御社の講師の方から『お助けネットクラウド』を紹介してもらい、日常的に触れることができる教材だったことに魅力を感じました。イベント的授業はあくまでもイベントでしかありません。やはり情報モラル授業は定期的にやっていく必要があると考えています。
―今年度も実態調査アンケートを行いますが、港区の情報モラル教育の取り組みに実際どのように役立てることができるでしょうか?
港区教育委員会様:
例えば、ある中学校の結果で見られた保護者と子供のSNSの意識のズレとか、港区の子どもはSNSに触れている率が高いことがわかってきたので、それに焦点を合わせた情報モラル教育を行っていければと考えています。